撚糸工連理事長らによる融資詐欺・横領事件発覚
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「撚糸工連事件」の記事における「撚糸工連理事長らによる融資詐欺・横領事件発覚」の解説
撚糸工連元課長が告訴されたことにより、撚糸工連理事長にも工連の資金管理方法などについて事情聴取が行われるようになった。同理事長は1974年同工連の理事長に就任。元々この工連は中小撚糸業者が集まっただけの業界団体に過ぎなかったが、彼が理事長に就任した頃から始まった「設備共同廃棄事業」が国策となり、工連は多額の資金を獲得できるようになった。こうして彼は撚糸業界のドンと言われるまでに影響力を強め、繊維族議員と親密な関係を築くようになっていった。この頃から既に与野党問わず多数の政治家に対し多額の政治献金をし、通産省の官僚たちに接待攻勢をかけていたとみられる。 1985年10月に入り、撚糸工連元課長の横領とは別に、撚糸工連理事長ら工連幹部が工連の資金を使って個人名義で株取引を行っていたことが発覚した。1978年から1979年頃にかけて工連の資金で株取引が行われるようになり、理事長ら4人の幹部とその幹部のうちの一人の妻1人、そして元課長の口座に工連の資金を移し頻繁に売買を繰り返していた。加えて、工連の交際費から政治献金をしているとの疑惑も持ち上がった。政治献金疑惑は1985年10月23日の参議院決算委員会で取り上げられ、当時の嶋崎均法相が献金を受けていた事実を認め(賄賂性については否定)、また、工連を監督する通商産業省の生活産業局長が一連の株取引の事実を認めるに至った。なお、撚糸工連理事長らはこの株取引に関して「個人名義で運用を行った方が便利」「利益は工連に戻し、損失が出た場合は個人で穴埋めをしていた」と釈明した。 事件発覚当初は一職員の多額横領事件と、ずさんな資金管理をしていた組織の問題に過ぎない事件だとみられていた。しかし、1986年2月になって事件は思わぬ方向へと進みだした。2月13日、「設備共同廃棄事業」をめぐる融資詐欺事件で撚糸工連理事長、前専務理事、石川県撚糸工業組合事務局長、同県で仮より糸加工斡旋業者ら4人が逮捕され、撚糸工連元課長が再逮捕された。同日、東京地検特捜部は東京の日本撚糸工業組合連合会の事務局をはじめ、撚糸工連理事長の経営する会社など全国20か所を大阪地検特捜部、金沢、神戸の4地検合同という異例の大布陣で一斉に家宅捜索した。 撚糸工連は、慢性的な構造不況を打開するために過剰な設備を買上げ、業者の転廃業を推し進める国の中小企業政策の一環として行われていた「設備共同廃棄事業」の買上げ資金として、中小企業事業団の低金利融資を受けていた。この買上げ政策の対象は登録された撚糸機械に限られていたが、登録の権利と機械本体は別々に取引されていた。撚糸工連理事長らはここに目をつけ、捨て値同然で取引されていた無登録の機械を買い集め、無関係な登録番号を付した書類を作成し、昭和57年度の中小企業事業団の融資金を詐取することを計画実行した。まず仮より糸の賃加工あっせん業者が買い集めてきた無登録の機械や、中国に輸出される機械合計13台に1975年当時の無関係な登録番号をつけた書類を作成。1982年に金沢市内の土建業者を取引業者に仕立て、融資受付窓口の商工組合中央金庫を通じてこの偽造書類を中小企業事業団に提出。翌1983年1月に融資金4億2000万円を詐取した。
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