推理・トリックのミス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 02:33 UTC 版)
本作では、古畑任三郎の超人的な推理が見所であるが、その推理にもいくつかのミスや破綻がある。また、犯人のトリック自体にもミスや破綻が見られる。なお、第36話『雲の中の死』において、「トリックに穴がありすぎる」という視聴者からの手紙に対して、古畑自身が「トリックに穴があるのは昔からで、今に始まったことではない」と認めており、特にシリーズ序盤の回ではミスが多い。下記に主だったものを取り挙げる。 小石川ちなみの事件 この事件では、「冷蔵庫に入っていた1か月前の卵を、卵スープに使った」ことを古畑は指摘している。確かに、生卵の賞味期限は通常2週間程度ではあるがこれは生食できる期限であり、加熱調理する場合には冷蔵庫に入れていれば消費期限は3か月から4か月、季節にもよるが常温でも1か月から2か月はもつ。本来、卵は消費期限の長い食品であり、美味しさにさえこだわらなければ、割ってみて腐っていなければ基本的に食べられる。よって、この指摘は古畑の推理ミスと言える。もっとも、その後に「そんなものは証拠になりません」と古畑は言っており、あくまで小石川を追及するための材料の一つとも考えられる。 幡随院の事件 この事件では、古畑が「犯人が幡随院でなければ不可能」とする根拠が、ファックスモデムを使用すれば誰でも犯行可能であることを見落としている点である。ファックスモデム付きパソコンは1994年の日本国内においては、すでに一般家庭にも普及し始めており、FAX通信ソフトで指定した時間にファックス送信することは誰にでも可能である。このため、ミステリ作品としては論理が完全に破綻してしまっている。この点はノベライズ単行本のあとがきにおいて三谷自身、放送時に最も指摘の多かったミスであることを認めており、同事件の小説版ではそれをふまえたドラマ版とは異なる結末が書かれている。 米沢八段の事件 この事件では、「カーボン紙」を使ってトリックを仕掛けている。しかし、実際に封じ手を行う際には、赤鉛筆を使って「盤面の書かれた図上で、駒を丸で囲んで、駒の動きを矢印で書く」ので、カーボン紙ではトリックを成立させることができない。 井口薫の事件 この事件では、井口が被害者をスタンガンで殺害しようとした際、被害者が頭をピアノの鍵盤に打ちつけて、ピアノの一番低いD(固定ドでレ)の弦が切れた事を井口が知っていた事が事件を解く鍵となったが、実際には、一番低いDの弦は一番太いため滅多に切れる事はない。この点について、ピアニストの中村紘子が「リアリティに欠ける」と指摘しており、三谷は小説版のあとがきで「これには参った」と述べている。 小清水潔の事件 この事件では、犯行現場に訪ねてくる今泉をハメるために、小清水が警察に110番で通報している。だが、警察への通報はすべて録音されているため、音声照合することで本人かどうか鑑定することは可能であり、トリック自体が成り立たない。特に、小清水の声はかなり個性的なので、高い確率で別人と判別される。 のり子・ケンドールの事件 この事件では、「トースターで今川焼は焼けない」と古畑は断言している。「ポップアップ式トースター」には確かに入らないが、1990年代に一般に普及していた「オーブン型トースター」では問題なく焼ける。そもそも、ポップアップ式トースターは基本的に食パン専用であり、たい焼きを入れるという推理にはかなり無理があり、ミステリ作品としては論理的にアンフェアと言える。
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