拉致指令と拉致訓練
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 08:10 UTC 版)
「金正日政治軍事大学」の記事における「拉致指令と拉致訓練」の解説
安明進によれば、対日工作を専門とする清津連絡所のスパイは日本に侵入することなどお手のものだと豪語しており、北朝鮮工作員からしてみれば「赤子の手をひねるようなもの」、「メシ食ってクソするくらい簡単」だという。工作員教育を受けている学生のうち、最も成績のわるい者が清津連絡所に配置されるが、日本侵入が一番簡単だからであり、優秀な人間は韓国侵入にまわされる。 日本に侵入する工作船は快速艇で、500馬力以上のOMC高速エンジンが4機ずつ搭載されており、50ノット近いスピードで航行することができるが、普段はレーダーにかからないようエンジン1台を低速で稼働させている。外見は日本の漁船に偽装している。また、工作員たちは日本の漁師が身に着けているような服を着用し、船名も日本名を使用する。さらに、工作母船の船主には船名を付け替えられるような細工がある。 安明進によれば、北朝鮮が日本人を拉致する最大の理由は、「祖国統一の偉業を完遂するため」である。分断された朝鮮半島を赤化統一するためには、植民地支配をおこなった日本の犠牲は当然であり、必要でさえあるというのが金正日体制の主張である。日本に侵入した際には可能なかぎり日本人を拉致してくるというのが、工作員に与えられたもう一つの任務である。そして、韓国や日本、東南アジア諸国に侵入させる工作員の教育係として、日本語教育や日本の文化、風習、地域的特性などを教えさせるのである。 拉致については、かつては銃や凶器を突き付けたり、急所を殴って気絶させたりしたこともあったが、1970年代中葉からは革やナイロンでつくられた拉致用の袋を使用している。この袋はようやく人間1人が入れるほどの大きさで、そのなかで暴れたり抵抗したりするとますます身体が締め付けられるようにできている。呼吸のための空気孔が1、2か所あいている。袋に入れるまでにハンカチかタオルのようなものに強力な麻酔剤をしみこませて口を覆う。工作員教育を受けるときは、915病院製作の麻酔剤を実際に用いて拉致の実習を行った。錠剤を使う場合もある。安明進は、大学の2年目から拉致の訓練が始まったと証言している。 侵入場所は日本海側に限らない。1980年代以降は、韓国が海岸警備を強化したのでむしろ東海岸、太平洋側が増えてきた。また、ロシア極東地方へ向かうとみせて日本漁船に紛れて南下するような偽装作戦も不可欠となってきた。それにより、レーダーの監視を逃れようというものである。 安明進によれば、1970年代以降の本格的な日本人拉致の張本人は金正日である。金正日政治軍事大学で使用されていた『南朝鮮革命史』『地下党建設』『主体哲学』などの教科書には、拉致の指令が金正日から発していることが明確に示されている。
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