打上げの失敗とカプセルの発見
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/27 14:34 UTC 版)
「EXPRESS (人工衛星)」の記事における「打上げの失敗とカプセルの発見」の解説
「M-3SIIロケット#M-3SII 8号機」も参照 当初は1993年冬季の打上げを予定していたが、1年後の1995年1月15日22時45分(JST)、鹿児島宇宙空間観測所からM-3SIIロケットで打ち上げられた。予定では近地点210km、遠地点400km、軌道傾斜角31度、周期90分の楕円軌道に投入されるはずだった。しかし、第1段切り離し後に重量過多が原因で異常振動が発生し、予定とは異なる近地点110 km、遠地点250 km、軌道傾斜角33度の軌道に投入された。衛星からの電波は1月16日1時02分(JST)からの30秒を最後に受信されなくなり、ドイツ宇宙オペレーションセンターが打上げから約9時間後における衛星電波受信の試みを最後として、EXPRESSミッションの遂行を断念した。EXPRESSは地球2周回目に太平洋上に落下・水没した、と担当のドイツ宇宙オペレーションセンターが結論した。 しかし実際にはカプセルはガーナのタマラ北100kmの山村の畑にパラシュートを展開して着陸していた。サンティアゴの地上局で受信された35秒のテレメトリーからは衛星のオンボードテレメトリー・テレコマンドシステムが正常に作動したことが分かっている。カプセルの表面にロシア語が書かれていたので、初めは弾頭ではないかと疑われたようだが、その地域には「空から降ってきたものに触れると幸福になれる」という言い伝えがあるらしく、村人たちに大事に扱われ、タマラ空軍基地にほぼ無傷で保管された。 その後ガーナの新聞が報じた落下物の記事を基にしたイギリス人衛星情報収集家ゲオフェリー・ペリー(Geoferry Perry)の推定により、ガーナで回収保管されていることが判明し、1996年1月現物が確認された。同年3月にドイツのブレーメンに移送され、回収されたカプセルの耐熱性能や搭載機器の健全性や飛行結果についての詳細な調査が日独の共同作業として実施された。 なおカプセルの回収に際して、古来からの言い伝えに従い、よい伴侶を求めてカプセルの傍らで昼夜お祈りをした青年や、幸運を求めてそっと手を触れてみる多数の村人たちのエピソードなども伝えられた。またドイツ側の担当メーカーだったERNO社はその村に小学校を寄贈し、謝意を表した。
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