手動転轍器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/13 20:46 UTC 版)
現場で手動で切り替える転轍器であり、その動作方法によって3種類がある。主要な手動転轍器には転轍器標識が設置される。進路の状態を表すのに標識またはランプを用いるものもある。 普通転轍器 常に人の手によって進路を変える転轍器。転轍器標識は、定位で青の円盤、反位で黄色の矢羽根形である。転轍器が列車通過時の振動で勝手に切り替わることがないようトングレールを固定するロック機構がある(ロック方式は数種類がある)。原則として駅員の管理下で取り扱われるために、機械的または電気的な鎖錠装置を持つ。信号扱所からてこで連動操作されることが原則であるが、入れ替え用途など線路脇のてこで操作できるものもある。留置線や保線用側線など、鎖錠の必要がなく通過車両が比較的軽量かつ低速である場合、転轍器のハンドル自体の重量またはばねの力によりトングレールを押さえつける簡易式のものもある(通称「ダルマ」または「ダルマポイント」)。日中線熱塩駅の機回し線には、スタフ(スタフ閉塞のスタフであり外見上はタブレットの玉)をセットしないと動かせない転轍器があった。これは当該区間が盲腸線でありスタフ閉塞という非自動閉塞区間であり、また熱塩駅自体も絶対信号機を持たない停留所でありながら分岐を持ち機回しを行う例外的な駅であったためである。本来分岐器を持つ停車場には場内出発信号機の設備が必要である。この処置により、列車運転時には分岐器は常に固定された状態になり、列車が進入可能で、かつ、分岐器が操作可能(固定されていない)と言う危険な状態を避けることが出来る。つまり、分岐器を操作できるときは閉塞に進入可能な列車は当該駅に停車している(=列車がスタフを持ち込んでいる)か、もしくは閉塞に列車が進入できない(スタフを代替手段で陸送した)のどちらかであり、スタフを取り出せたならば分岐器は固定されている。 発条転轍器(スプリングポイント) 進路が原則的に定位に固定され、列車は定位方向だけに通行可能である。ただし、反位側からの列車は車輪によってトングレールを押し広げて(割出しとも言う)通過でき、通過後は内蔵されたスプリングと油緩衝器 によって自動的に定位へ戻る。このためポイント操作が不要である。必要に応じて普通転轍器と同様に手動で反位に固定することもできる。転轍器標識は、定位で青の円盤にSの文字、反位で黄色の矢羽根形である。またトングレールがどちらかのストックレールに密着しているかを検知して転轍器の開通方向を知る転轍器回路制御器又は鎖錠する為の電磁転轍鎖錠器を設置しており、前者はトングレールに接続したロッドを検知する方法とストックレールに穴を開けた後、突起を付けたセンサーを取付けてトングレールの可動によりそれを作動させる方式があり、後者は鎖錠の場合には内部のソレノイド電磁石に電源が入り励磁して転轍器を定位方向に固定させ、鎖錠を解除する場合には内部のソレノイド電磁石の電源を切り転轍器の定位方向の固定を解除することによりトングレールを押し広げることが可能となる。両者とも進路を設定の際に必要な装置であり、進路構成後に出発・場内信号機を現示させて列車を進行させる。 反位側からの進入には厳しい速度制限が加わるため、路面電車の折返し点や優等列車運行のない単線区間の交換駅など、進行方向が一定かつ通過速度も遅い箇所で使われている。しかし速度制限や、通過する車輪とトングレールの摩耗などの問題から減少傾向にあり、設備改良などで発条転轍器から電気転轍器に交換したケースもある。 脱線転轍器 定位で脱線するようになっている転轍器。交換駅・待避駅等で安全側線が設けられない場合に設けられるが、低速でなければ車両転覆の危険があるので、主に保留貨車の本線暴走突入防止に使われていた。定位のときの標識は赤の四角、反位のときは黄色の矢羽根形である。 転轍器標識(普通) 転轍器標識(脱線) 転轍器標識(スプリングポイント) 普通転轍器(ダルマ) 路面電車の軌道に使用されている発条転轍器これ以外に付帯設備は一切なく、トングレールも片側だけ。 脱線転轍器
※この「手動転轍器」の解説は、「分岐器」の解説の一部です。
「手動転轍器」を含む「分岐器」の記事については、「分岐器」の概要を参照ください。
- 手動転轍器のページへのリンク