戦艦の昼間砲戦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 17:03 UTC 版)
ザラ級重巡洋艦と見間違えられやすいイタリア軽巡洋艦の1グループは連合国艦隊寄りに接近しており、「アルベリコ・ダ・バルビアーノ」と「アルベルト・ディ・ジュッサーノ」は「ウォースパイト」の射程内にあって射撃を受ける可能性があった。しかし、最適な位置にいながら戦艦「ウォースパイト」は同型艦の「マレーヤ」を待って旋回を行い、「ロイヤル・サブリン」はいまだに後方に位置していた。 イタリア艦隊の指揮官イニーゴ・カンピオーニ中将は「ウォースパイト」を引きつけることを決意し、戦艦2隻の行動が開始された。15時52分に「ジュリオ・チェザーレ」は「ウォースパイト」との距離26,400mで砲火を開いた。しかし、複数の艦艇が1つの目標に射撃すると弾着がどの艦のものなのかを見分けるのが難しくなるというユトランド沖海戦の教訓から、イタリア海軍は1目標には1隻のみ砲撃できることにしていた。そのため、「コンテ・ディ・カブール」は砲戦に参加せず、「マレーヤ」と「ロイヤル・サブリン」に備えた。 「ウォースパイト」は2隻の砲撃を受けずに済んだが、連合国艦隊はイタリアの戦術を知らず、「ウォースパイト」は砲火を分散させて二隻共に攻撃していた。「ジュリオ・チェザーレ」の斉射のうち1つが「ウォースパイト」を護衛していた駆逐艦「ヘレワード」と「デコイ」に損害を与えた。15時54分に「マレーヤ」がイタリア艦隊に混乱を起こさせようと射程外から射撃を開始した。イタリアの重巡洋艦隊は15時55分に「ウォースパイト」を目標に射撃を開始したが、連合国艦隊の巡洋艦隊が戻ってきたのですぐに中止した。 15時59分に「ジュリオ・チェザーレ」の砲弾2つが「ウォースパイト」の近くに着弾した。その直後に「ウォースパイト」の381mm砲の砲弾1つが「ジュリオ・チェザーレ」の後部甲板に命中した。この命中弾は37mm対空機関銃の弾薬に引火し、火災で発生した煤煙が機関室の吸気口に吸い込まれボイラーの半分を停止しなければならなかった。「ジュリオ・チェザーレ」の速度は18ノットまで下がり、「コンテ・ディ・カブール」が前進した。「ウォースパイト」は24,000m(26,000ヤード)以上も離れた地点で「ジュリオ・チェザーレ」に命中弾を出し、今日の移動目標に対する最長の命中記録の一つとなった。 「ウォースパイト」は「ジュリオ・チェザーレ」に渾身の一撃を加える優位に立ったが、後続の「マレーヤ」が追いつけるように砲撃を中止して再び旋回を行った。「マレーヤ」の測距員はイタリア艦隊が離脱行動を意図していることに気がついた。この時、「マレーヤ」から「ジュリオ・チェザーレ」への砲撃は、2,500m(2,700ヤード)手前に落下していることが、「ウォースパイト」の砲撃の観測から確認された。 16時1分にイタリアの駆逐艦隊は戦艦を守ろうと煙幕を展開した。戦い方に関して現在もいくつかの議論があるが、連合国艦隊の戦艦は離脱を選択する機会を獲得し、イタリアの駆逐艦隊は煙幕内から魚雷の発射を試みるチャンスを作った。もちろん、煙幕の中でどのようにして目標を確認するのかということについても、議論の対象となっている。
※この「戦艦の昼間砲戦」の解説は、「カラブリア沖海戦」の解説の一部です。
「戦艦の昼間砲戦」を含む「カラブリア沖海戦」の記事については、「カラブリア沖海戦」の概要を参照ください。
- 戦艦の昼間砲戦のページへのリンク