憲法上の根拠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/05 20:15 UTC 版)
海外渡航の自由は狭義には一時的な外国旅行の自由をいい、広義には外国に住所を移す自由を含むが、このうち外国に住所を移す自由は日本国憲法第22条第2項によって保障されている。一方、狭義の外国旅行の自由の憲法上の根拠については争いがある。 日本国憲法第22条(参考) 第1項 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 第2項 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。 憲法22条2項説(判例・多数説)憲法22条1項に定める居住移転の自由はもっぱら国内における居住自由の移転であり、憲法22条2項が永住のための出国を保障しながら旅行のための出国を保障していないとするのは不合理であるから、憲法22条2項の「外国に移住」には一時的な海外渡航を含むとする。 判例も憲法第22条第2項を根拠としている(最大判昭和33・9・10民集12巻13号1969頁、最判昭和60・1・22 民集第39巻1号1頁) 本説は憲法第22条第1項を国内についての規定、第2項を国外についての規定と捉えるものであるが、形式的にすぎる二分法であるという指摘がある。 憲法22条1項説憲法第22条第2項は国籍離脱の自由と並んで外国に移住する自由を保障しており、「移住」という言葉の文理からも規定の位置からも一時的な海外渡航の自由を含むものではないとする一方、憲法第22条第1項にいう移転の自由は住所を変更する自由のみでなく、国の内外をもって区別せずに広く人身の移動の自由を保障したものであるから、海外渡航の自由は憲法第22条第1項によって保障されるとする(最判昭和60・1・22 民集第39巻1号1頁伊藤正己裁判官補足意見)。 本説に対しては、1項で住居や居所を定めて移転する自由に密接不可分の自由として旅行の自由を認めうるならば、2項でも外国に住所を移す自由に密接不可分の自由として外国旅行の自由も認めうるはずであるという指摘がある。 憲法13条説旅行の自由は憲法第22条の「移住」や「移転」とは性質を異にしており、一般的な自由または幸福追求の権利の一部分をなすものとして日本国憲法第13条で保障されている(最大判昭和33・9・10民集12巻13号1969頁田中耕太郎=下飯坂潤夫補足意見)。 本説に対しては、外国旅行の自由が居住移転の自由や外国に定住する自由と切り離されてしまうという問題のほか、個別の人権規定に根拠を認めうる場合にたやすく憲法13条を根拠とすることは避けるべきで制約基準も緩やかになってしまうという問題が指摘されている。
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