感染拡大の原因とペストの種類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/02 23:58 UTC 版)
「マルセイユの大ペスト」の記事における「感染拡大の原因とペストの種類」の解説
18世紀、ペストの感染様式やペストの原因について知られていなかったため、同時代の医薬品や予防措置にはほとんど効果はなかった。原因菌であるイェルシニア・ペスティスがアレクサンダー・イェルシン(フランス語版)によって発見されたのは1894年のことだった。同時代の記述によれば、マルセイユのペストは腺ペスト、より正確に言えば、腺ペストと敗血症性ペストであったと断定できる。一方で、患者の呼気単独で感染力を持つ形態である肺ペストは除外されなければならない。一部の歴史家はもし仮に肺ペストが流行していたならば、フランス全土、そしてヨーロッパ全土へと感染は拡大し、相当の死者をだしたと考えているが、この仮定は大多数の歴史家からは根拠のないものとみなされている。 腺ペストの場合、ネズミと動物に着くノミが通常感染源となる。しかし、ベルトラン医師やピシャティ・ド・クロワザントのような同時代人の手による記述にはネズミの死亡率についての言及はない。真の感染源はペスト菌を保有するノミであることは事実であるが、衣服や織物を通じてヒトからヒトへと感染していた。ネズミはこの病気の媒介に何らかの役割を果たしているのではないかと疑う者もいた。18世紀のフランスに分布していたのはクマネズミのみで、クマネズミの行動は現在広く分布するドブネズミとは異なる。病気にかかったクマネズミは遠隔地で死ぬ傾向がある一方、ドブネズミの場合は街中で死ぬ傾向がある。昆虫学的に厳密にいえば、ペストを媒介したケオプスネズミノミ(Xenopsylla cheopis)は一般には22度以下の低温に耐えられない。主な媒体であるネズミ、その暴露を受けたヒトの大部分が消失した後、マルセイユの天候と気温は1720年5月末から10月にまでのノミニよるペストの感染拡大および収束に関与している可能性がある。気象学的には6月のマルセイユの日中の平均気温は25度、9月には23度、10月にはわずか平均18度まで低下する。その一方で7月から8月にかけての気温が最も高くなる時期は、平均気温は26度に上昇し、その気温がケオプスノズミノミの繁殖と拡大に有利に働いた。
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