情報収集衛星と偵察衛星
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/12 08:39 UTC 版)
「情報収集衛星」の記事における「情報収集衛星と偵察衛星」の解説
法令上の情報収集衛星の定義は、「我が国の安全の確保、大規模災害への対応その他の内閣の重要政策に関する画像情報の収集を目的とする人工衛星」である(内閣官房組織令第四条の二第2項第1号)。 日本の衆議院が1969年(昭和44年)に全会一致で可決した「わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」では「宇宙に打ち上げられる物体及びその打上げ用ロケットの開発及び利用は、平和の目的に限り」と言明しており、日本国政府も宇宙の軍事利用を平和構築の手段として認識していなかったことから、日本の衛星開発と利用は専ら非軍事目的に限られ、軍事衛星用の偵察衛星の保有を忌避してきた。 しかし、北朝鮮のテポドン発射事件後、偵察衛星の保有が日本の国家安全保障上の喫緊の課題となった。このため、1985年(昭和60年)に出された「一般的に利用されている機能と同等の衛星であれば(軍事的に)利用することは可能」とする「一般化原則」の政府統一見解に則って、1998年(平成10年)に大規模災害等への対応もできる多目的な「情報収集衛星」を事実上の偵察衛星として保有することが決定された。 その後、2008年(平成20年)5月21日に成立した宇宙基本法で「国は、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資する宇宙開発利用を推進するため、必要な施策を講ずるものとする。」(第14条)と明定されたことから、非軍事という制約を脱し宇宙条約の国際標準である非侵略目的の衛星保有が法的にも正式に認められることになった。この流れを受けて、日本政府は一般化原則の枠を超えて、開発開始時点において商用衛星の分解能を超える情報収集衛星光学5号機の研究開発に2009年度(平成21年度)から着手した。 宇宙基本計画の策定作業では、弾道ミサイル監視目的の早期警戒衛星導入も検討され、2009年(平成21年)4月5日に再度発生した、北朝鮮のミサイル発射実験もあって、一時これに関する議論が日本国政府において活発になったが、2013年(平成25年)4月時点で「我が国独自の早期警戒衛星を持つとすると莫大な予算が必要であり、費用対効果の観点も含め、政府全体として考えていきたい」と導入に対する進展は見られていない。
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