性的対象化と女性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 06:45 UTC 版)
男性による女性の性的対象化は女性を第一に性欲の対象として取り扱い、全人的な存在を等閑視する。具体的にいかなる状況が性的対象化であるかについては意見が分かれているものの、フェミニストは女性の性的魅力を強調するメディアや広告、そして女性を従属的な弱者として扱う放送、芸術、広告、ポルノグラフィ、あるいは売春やストリップ、さらに男性が公的な場で女性の魅力や美しさについて論評する場面、たとえば美人コンテストや豊胸・ラビアプラスティの美容整形が必要とされる状況において性的対象化は実践されていると考えている。メディアにおける性的対象化は様々な手段によって行われる。例えば女性主人公の不足や、極端な場合には非常に性的なセリフが使われたり、挑発的なドレスをまとった女性が登場することもある。 フェミニストと心理学者は性的対象化は女性に拒食や鬱、そして性的不能をもたらすのみならず、彼女らの知性や能力が現に社会によって無視され、これからも無視され続けるだろうという期待を抱かせることによって自信を失わせることがあると主張している。フェミニスト運動は家父長制・パターナリズム的な婚姻に引導を渡し、自由恋愛を推奨した(例えば女性が性的快楽のために婚外交渉を楽しむようになった)ことによって性的対象化の問題に貢献したと評価されることもある。 一方で自由恋愛は男性が生涯のうちに体験する女性の数を増加させ、次いで一部の(上位の)男性にとってのセックスの価値が下がり、さらには彼らにとっての女性そのものの価値まで切り下げることになった。ある研究によると、女性が性的対象化されるメディアに触れている男性は、そうでないメディアに触れている男性と比べてこうした行動パターンをとりやすいということがわかっている。性的対象化が女性と社会に与える影響は学会でも議論の種になっているが、ある者は女の子たちが性的対象化を通して美貌の重要性を理解し、女性への成長を通じて恐怖、恥じらい、あるいは嫌悪感を学習すると主張している。一方で、若い女性はとくに性的対象化されやすいため、それらに触れることで女性特有の魅力が影響力、尊敬、さらには富へと交換できることを学習すると主張する者もある。 ロバート・ジェンセン(Robert Jensen)やサット・ジェリー(Sut Jhally)をはじめとするフェミニスト派の文化評論家はマスメディアと広告こそがマーケティングのために女性の性的対象化を促進していると批判している。 女性の性的対象化への反対は現代に端を発するものではない。フランス啓蒙主義においては、女性の乳房は性的な誘惑物なのか、あるいは単なる器官にすぎないのかについての論争があった。1771年、フランスの作家アレクサンドル・ギヨーム・ド・モワシー(Alexandre Guillaume Mouslier de Moissy)による戯曲『The True Mother (La Vraie Mère)』において、主人公の女性は夫が彼女を性的な鑑賞物として扱っていることを叱責する。 「なんで胸ばっかり見ているの?自然からの素晴らしい贈り物を、ただの飾り物だと思って!」
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