役者の養成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 07:16 UTC 版)
歌舞伎役者の家柄に生まれた者の場合、幼少時から芸の基礎となる習い事(日本舞踊、長唄、鳴物など)を始め、未就学のうちに役者の子や孫として舞台に上がる「初お目見え」、そして「初舞台」を経験し、子役として舞台経験を積む。思春期になり変声をすると役がつかなくなり、20歳ごろまでは稽古をしながら学業に励む時期となるため、ここで自らの進路について考えることとなる。歌舞伎役者になることを選ばない者もいる。 歌舞伎とは関係のない家に生まれた世襲以外の志望者については、国立劇場の新人育成研修(後述)、1997年に開塾した松竹上方歌舞伎塾で研修生を募集しており、選考試験に合格した者が研修を受けることができる。研修終了後は国立劇場養成課などを通じ、歌舞伎俳優に弟子入りをして、師匠から芸名をもらう。また入門後に歌舞伎の世界の礼儀作法やしきたりなどを覚え、セリフの無い役や立ち廻り、後見や付き人などとして役者修行をはじめる。このような経緯を辿って役者となり、抜擢も受けるようになった例としては、二代目市川笑也や中村芝のぶ、二代目市川月乃助や二代目市川春猿らが知られる。 ほか、子役で歌舞伎の舞台に出演したときに素質を見込まれて部屋子・芸養子となると、役者と同じ楽屋で鏡台を並べ、有力な役者の子弟(御曹司)と同様に教育を受けることとなる。このように育成された例としては、五代目坂東玉三郎や六代目片岡愛之助などが知られている。 歌舞伎界に入門して10年以上で幹部俳優の推薦を受けた役者は、日本俳優協会の名題資格審査(名題試験)を受験することができる。筆記・作文・実技の審査に合格して『名題適任証』を取得し、関係各方面の賛同を受けて名題昇進披露を行った者は「名題俳優」と呼ばれる。歌舞伎俳優の家に生まれた者も歌舞伎とは無関係な家に生まれた者も、同様に受検して資格を得ている。名題に昇格していない者は「名題下」と呼ばれるが、『名題適任証』を取得しているにも関わらず、あえて昇格をしない者もいる。単なる身分の上下ではなく、立ち廻りの演出を行う専門職の立師(たてし)は名題下の職分であるためである。 銀行員であったが市川宗家に婿入りしたことから29歳で役者修業に入った五代目市川三升、三代目市川猿之助と浜木綿子の息子として生まれたが両親の離婚のため母親に養育され、長らく本名(香川照之)で俳優活動を行った後に45歳で歌舞伎の世界に入った九代目市川中車などは珍しい例といえる。
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