廃止・適用緩和をめぐる議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/12 15:17 UTC 版)
「近親相姦罪」の記事における「廃止・適用緩和をめぐる議論」の解説
「近親相姦の合法性」も参照 フランスでは1810年に近親相姦罪は撤廃されているが、これはナポレオン・ボナパルトの意向によるものであった。日本でも、刑法制定審議過程でギュスターヴ・エミール・ボアソナードが社会道徳を刑罰規定に盛り込むべきではないと主張し近親相姦罪は削除された(制定は1880年)。ロシアや中華人民共和国の法律ではイデオロギー的な事情もあって近親相姦に対する刑罰規定は存在しない。 ドイツで問題になった例としては、兄妹が近親相姦で有罪判決を受け、近親相姦罪の合憲性を巡って連邦憲法裁判所の審議にかけられた事例が有名である。子供を4人ほど兄妹でもうけていた事件であるが、兄妹の父親がアルコール依存症で家族がバラバラとなったものであり、その家庭の子供達のうち3人が死亡し生存していたのがこの兄妹の2人だけであったもので、このような状況で近親相姦罪を適用されてしまった兄妹にドイツ国民から同情が集まった。だが、2008年に連邦憲法裁判所はこの事件でも近親相姦罪は合憲との判断を出している。 2008年の判断においては、ドイツの連邦憲法裁判所は家庭内弱者の保護と近親交配の抑制を理由として近親相姦罪の合憲判決を出した。近親相姦で子供が生まれた場合は子供の遺伝的リスクが高くなることはよく言われるが、子供の人権を否定することにもなりかねず、あくまで確率論であるため、これは補助的に用いられることが多い。通常は一番の理由として用いられるのは家族関係の保護であるが、そもそも既に家庭が崩壊しているために近親相姦が起こっているという反論があり、古典的な家庭像が崩壊しつつある状況では不満の声も根強くなってきている。 ルーマニアでも近親相姦を罰する法律が存在し最高7年の投獄を宣告することが可能とされたが、成人同士の近親相姦までもが違法化されているため論争が発生しており、撤廃を求める声もあるがルーマニア正教会は道徳や心理的な問題から反対の立場をとっている。ルーマニアの住民の中にはそもそも合意の上で近親相姦が起こるということについて疑問視している人もいる。 スウェーデンでも兄弟姉妹の近親相姦を罰する規定は存在する。だが問題も発生しており、恋愛関係にある異父兄妹のカップルを近親相姦罪で有罪にしたのだが、裁判所命令を無視され同棲を継続され子供を2人作られる事件も発生したことから、近親婚の制限を緩和する方向で対応することになり、1973年の婚姻法の改正で異父または異母の兄弟姉妹婚は要許可制にした上で認めると法律で定めることとなった。 アメリカ合衆国でも、幼児期には自分と会ったことがなかった妹との間に子供を4人作った兄が近親相姦を罰する規定に訴訟を起こした事例が存在し、通常の家庭という概念が当てはまらない兄妹だということもあり注目されたが、2005年に兄の訴えは棄却された。オーストラリアでも近親相姦罪は存在し、2008年に父親との間にもうけた娘とともにテレビ出演し成人同士の近親相姦への理解を求めた娘もいる。2008年には、近親相姦罪で有罪になってしまったスコットランドの異父兄妹がグッド・モーニング・アメリカのインタビューを受けた例もある。
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