導入までの経緯とその後
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「大学入試センター試験」の記事における「導入までの経緯とその後」の解説
2006年度から「外国語」で英語を選択した受験生には、「英語(リスニング)」の受験が必要となった。これは、「高校生は読み書きだけでなく、実用的な英語を身につけてほしい」という大学側の要望がある。当初は各会場のスピーカーで音声を流す案も検討されたが、設備面の問題や条件を均質にする配慮から、メモリーに録音された音声を再生するICプレーヤーによる「個別音源方式」に決まった。ICプレーヤーによるリスニング試験は世界初である。ただし、特殊なスピーカーを使用すれば、各試験会場の条件を均質化することができる、との意見もある。 当初、大学入試センターは、ICプレーヤーについて、「メーカーが出荷前に1台ごとに振動検査を行い、電池も新品を入れているため、途中で動かなくなる事態は考えられない」「プレーヤーは腰の高さから落として動作を確認しており、故障はまずない」と自信満々な姿勢を示していた。しかし、教育関係者などは、英語がセンター試験で受験者数がかなり多いことから、50万台以上の機械を使う試験で、1台も故障せず、1人の受験生も操作ミスをしないということが、果たしてあるだろうかとの疑問を呈していた。 2004年9月26日には、リスニング試験の「試行テスト」がセンター試験を利用する大学を会場として行われた(全国503大学・508会場)。受験対象となったのは、2006年に現役受験生となった当時の高校2年生で、希望者の中から抽選された約4万人が受験した。試行テストは、本番で試験を円滑に行うため、大学側に実施の手順に慣れてもらうことや、ICプレーヤーの性能確認(聞こえや作動具合、ヘッドホンとイヤホンの違い)などが主な目的であった。なお、試行テストの試験結果は受験者には通知されなかった。この試行テストでは、ICプレーヤーによる大きなトラブルは発生せず、「個別音源方式で円滑な試験実施は可能」と大学入試センターは判断した。 しかし、教育関係者の個別音源方式に対する不安は現実のものとなり、2006年度のリスニング試験では、東京など20都府県の試験会場で、ICプレーヤーの故障などが発生したとされて、再テストが行われるというトラブルが相次いで発生した。約1100人の内1人にトラブルがあったとされ、三大予備校が実施したリスニング試験の模擬試験に比べるとトラブルの発生率が高かった。リスニング試験が実施された1月21日の夜には、大学入試センターの記者会見が開かれ、反省の弁を述べた。当時の事業部長は、「トラブルの申告をしたすべての受験生に対して、再テストを受験させることに決めていた」「性善説に立っている」と発言したが、その後当時の文部科学大臣が陳謝する事態となった。主なトラブルとしては、電源を入れても音声が聞こえない、試験途中で音声が聞こえなくなる、操作をしていないのに音量が変化する、などがあげられる。トラブルの多くは操作方法のミスや勘違いであるため事前に大学入試センターのホームページで操作を確認できるようにしている。 2007年度は、前年度のトラブルを反省し、イヤホンを最初から装着するなどの対策を行ったが、227大学で少なくとも351人から「音声が聞き取りにくい」などとICプレーヤーの不具合があり、少なくとも381人が再テストを行った。 2008年度も2006年、2007年と同様の形式で実施された。2007年度より人数は減ったものの相変わらずICプレーヤーの不具合を訴える受験生がおり、175人が再試験となった。2009年度には再び増加して253人が再試験対象となり、うち249人が再試験を受けた。
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