定義された不動産権その他の権益
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/26 04:43 UTC 版)
「物的財産」の記事における「定義された不動産権その他の権益」の解説
法は、物的財産に対する異なる種類の権益を認めており、これを「不動産権(estate)」という。不動産権の種類は、一般に、当該不動産権の取得に係る捺印証書(deed)、賃貸借契約書(lease)、売渡証(bill of sale)、遺言(will)、土地払下げ(land grant)などの文言において定められている。不動産権は、種々の財産権によって区別され、これにより当該不動産権の期間および譲渡可能性が設定・決定される。不動産権を享有する当事者を「不動産権保有者(tenant)」という。 主要な不動産権(estate in land)として以下のものがある。 単純封土権(fee simple):期間無限定の不動産権であり、自由に譲渡可能である。もっとも通常でおそらく最も絶対的な性質を有する不動産権である。不動産権保有者は当該物的財産の処分について最大限の裁量を享有する。 条件付き単純封土権(conditional fee simple):捺印証書において設定者が定めた一または複数の条件が成就するまでを期間とする不動産権である。当該条件が成就した場合、当該物的財産は設定者に復帰し、または残余権に係る権益が第三者に与えられる。 限嗣封土権(fee tail):不動産権保有者の死によってその相続人に移転することとなる不動産権。 生涯不動産権(life estate):被設定者の生涯に限り継続する不動産権。生涯不動産権が売却されたとしても、売買によって期間を変更することはできず、当初の被設定者の生涯に限定される。life estate pur autre vieは、他人の生涯を期間として保有される不動産権である。このような不動産権が生じるのは、当初の生涯不動産権保有者がその生涯不動産権を他人に売却した場合や、生涯不動産権が当初からpur autre vie(他人の生涯について)設定された場合である。 不動産賃借権(leasehold): 契約により定められた期間に限定された不動産権で、当該契約は賃貸借契約(lease)と呼ばれ、賃借権の設定を受ける当事者たる賃借人(lessee)と、他方の当事者であり、当該物的財産に対してより長期の不動産権を有する賃貸人(lessor)の間で締結される。例えば、集合住宅の一室に一年間の賃貸借で居住する者は、その一室に対する不動産賃借権を有する。典型的な場面においては、賃借人は合意により所定の賃料を賃貸人に支払う。 ある物的財産に対して、期間限定のある不動産権の終了後に連続して不動産権を享有する不動産権保有者は、将来不動産権(future interest)を有しているものとされる。将来不動産権のうち、重要な2つの類型は以下のとおりである。 復帰権(reversion):復帰権が生じるのは、不動産権保有者が自身の期間よりも最大期間がより短い不動産権を設定した場合である。当該土地の所有権は、被設定者の期間の終了により当初の不動産権保有者に復帰する。当初の不動産権保有者の将来不動産権が、復帰権である。 残余権(remainder):残余権が生じるのは、単純封土権を有する不動産権保有者が、何者かに対して生涯不動産権または条件付き単純封土権を設定し、当該生涯不動産権が終了しまたは当該条件が成就した場合には当該土地を有することとなる第三者を指定した場合である。当該第三者は、残余権を有しているものとされる。当該第三者は、生涯不動産権保有者による当該土地の使用を制限する法的権利を有することもある。 不動産権の共同保有形態には、生存者権付き合有不動産権保有者(joint tenants with rights of survivorship)または共有不動産権保有者(tenants in common)がある。この2つの共同保有形態の違いは、基本的には、当該不動産権および各不動産権保有者の有する持分の相続可能性にある。 生存者権付き合有不動産権保有(JTWROS: joint tenancy with rights of survivorship)においては、一方の不動産権保有者の死は、他方の生存する不動産権保有者が当該不動産権を単独で有することとなることを意味する。死亡した不動産権保有者の相続人には何も与えられない。法域によっては、"with right of survivorship"(生存者権付き)との語が用いられない限り、当該不動産権は生存者権(rights of survivorship)を伴わない共有不動産権とされる。共有者はJTWROSにおける共有者は常に平等な持分を有する。すなわち、各不動産権保有者は、購入価格への寄与に関わらず、当該物的財産に対する平等な持分を有しなければならない。当該物的財産が売却されまたは再分割された場合、その代金は平等に分配されなければならず、いずれかの共有者が当該物的財産の購入に寄与した超過額に応じた特別な分配はなされない。 共有不動産権保有者(TIC: tenants in common)のうちのある共有者が死ぬと、その有していた持分に応じた割合で当該物的財産の一部が相続対象となる。持分は、譲渡証書において異なる定めをしない限り、全ての不動産権保有者の間で平等と推定される。しかしながら、TIC財産が売却されまたは再分割された場合、国や州などによっては、購入価格への寄与が平等でない場合には(JTWROSの場合とは異なり)特別な分配が自動的になされ得る。 物的財産を複数の不動産権保有者によって共有するには、コンドミニアムや住宅協同組合(housing cooperative)、建物協同組合(building cooperative)を通じて行う方法もある。
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