宗教劇、彫刻、絵画、文学におけるユダヤ人
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「反ユダヤ主義」の記事における「宗教劇、彫刻、絵画、文学におけるユダヤ人」の解説
中世宗教劇の神秘劇、聖史劇、奇跡劇などでは、ユダヤ人は悪人として描かれ、『聖餅の聖史劇』ではユダヤ人高利貸しがキリスト教徒の女をたぶらかし、聖餅を盗み出させた後、聖餅を石で踏みつけたりしても聖餅は血を流すのみで、この奇跡によって、ユダヤ人は改宗するが、有罪判決となって、焚刑に処されるという筋書きであった。ドイツ聖史劇の『アルスフェルトの受難劇』では、悪魔がイエスの謀殺を14人のユダヤ人にゆだねて、ユダヤ人集団は拍手喝采しながら、イエスを罵倒しながらイエス磔刑を行うが、釘打ちや縄縛りなどが原文で700行以上費やされ、また舞台上では赤い液体が用いられて迫真な演技が行われた。フランスのジュアン・ミシュレの受難劇では、ユダヤ人がイエスを拷問し、イエスの髪や髭が肉ごと引き抜かれ、イエスの体に担当ごとに投打が加えられた。イギリスの聖史劇、聖体祝日に行われたコーパス・クリスティ祝祭劇では「ノアの方舟」を船大工ギルド「最後の晩餐」をパン職人ギルド、など各ギルド(ミステリー)が分担した。キリスト受難は釘師ギルドによって担当され、残酷なシーンで演者の釘師が失神したり、観客には発狂するものもいたこうした聖史劇ではユダヤ人は黒布をまとった血に飢えたサディストとしてグロテスクに描かれた。 奇跡劇では、ユダヤ人が自分の財宝を守るためにキリスト教聖人聖ニコラに助けを求めて改宗する筋が描かれた。ゴーティエ・ド・コワンシ−(1177-1236)の奇跡劇では「獣よりも獣に近いユダヤ人」について「神もまた彼らを憎みたもう。よって誰しもが彼らを憎まなければならない」と書いた。 ストラスブール大聖堂などの教会ではシナゴーガ像とエククレーシア像が対比され、ユダヤ教会を表すシナゴーガ像は折れた槍を持ち、目隠しをされ、キリスト教会を表すエククレーシア像は十字架と聖杯を持つ。 14世紀末にはイタリア絵画で、ユダヤ人が蠍になぞらえられた。ドイツやオランダでは雌豚に育てられたユダヤ人という図案が教会石碑に刻まれ、レーゲンスブルク教会やヴィッテンベルク教会では豚の乳を飲むユダヤ人の壁面彫刻が飾られた。ヴィッテンベルク教会の豚の乳を飲むユダヤ人の壁面彫刻については、ルターがユダヤを攻撃した時に描写した。また、14世紀以降には、頭に角を生やしたユダヤ人が、オーシュ大聖堂のステンドグラス、ヴェロネーゼのキリスト受難などで登場した。 1378年、フィレンツェの作家ジョヴァンニ・フィオレンティーノは『粗忽者(イル・ペコローネ』は「人肉一ポンド」を抵当にするユダヤ人高利貸しを登場させ、シェイクスピアが『ヴェニスの商人』の底本とした。 1386年、ジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』尼寺長の話で「リンカーンのヒュー」という少年がユダヤ人によって殺され肥溜めへ放り込まれたとある。これは1255年の儀式殺人についての『ヒュー殿、あるいはユダヤ人の娘』という14世紀に流布したバラッドからの影響とされる。チョーサーはまた、小アジアのユダヤ人ゲットーを「忌むべき金貸し業や道ならぬ金儲けのための区画」と描写した。 1399年、プラハでユダヤ人迫害。
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