学士号の意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/24 02:43 UTC 版)
学士号は、明治 - 戦前期においては、大学卒業人口が少なかった面もあり、その権威性は今日と比較にならないほど高かった。大学卒業者は相当なエリートとしてとらえられていたのである。学士号保有者について新聞などで記す場合、氏名の後に学士号を付記される習慣があった。また、「学士様」と尊称されることもあり、「学士様ならお嫁に上げよか」と言われ、1926年には『娘やるなら学士様へ』という映画も作られた。 しかし、大学の数は年代を経るごとに増加していき、大学卒業者も次第に一般化していく。学士様と呼ばれ、新聞報道では氏名の後に学士号を付記した習慣も、やがて無くなっていった。昭和3年(1927年)にかけては昭和金融恐慌が起こり、大学卒業者の就職難が深刻化し、昭和4年(1929年)には『大学は出たけれど』という映画作品まで作られるようになった。大正初期以降の社会においては増加する高学歴者を受け入れる場所が、官界以外殆どなく、学士は常に過剰で就職も困難であった。そのあおりで財閥に学士が就職することが起こった。 戦後は、大学卒業者が企業の幹部候補として珍重された。しかし、国民生活が豊かになるにつれて、大学の数、卒業者数ともに増加していった。大学・短期大学進学率については、昭和35年(1960年)は10%だったものが、平成18年(2006年)では45.5%である。1991年に、学校教育法並びに学位規則が改正され、学士号を学位とするなどの変更があった。 学士の学位は資格取得の要件とされたり、学士入学の機会や、大学院進学の要件とされている。次のステップアップを図る上での基礎資格的性格を帯びているのである。また、今日の生涯学習の時代にあっては、学士の学位をひとつの目標としてとらえる人も多い。学習意欲のよりどころとして、学士取得を目標に掲げる人が増えつつあるのが現状である。さらに、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が発足し、4年制大学学部卒業者以外にも学士の学位取得の門戸が広がっている。既に所有している学士に加えて別の学士を取るべく同機構の審査を受ける者もいる。能力と意欲のある人に学士の学位を取得する機会を広げることは、有効な選択肢として期待される。 ちなみに、すでに学士の学位を有する者が、大学に学士入学して卒業したり、科目等履修生として必要な単位を取得して独立行政法人大学改革支援・学位授与機構に申請することにより学士を取得することで、通算して2つ以上の学士の学位を持つことをダブルディグリーという。 なお、学士の学位は今日、第1種教育職員免許状を取得する際の基礎資格でもあり、また、文部科学省の定める専修学校設置基準では、学士の学位を取得すると専修学校高等課程教員資格、実務経験2年以上で専修学校専門課程教員資格が自動的に発生するなど、その指導的な地位が保障されている。
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