外部EGR
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 21:05 UTC 版)
排気バルブからのガスの引き戻しではなく、排気経路と吸気経路を配管等で接続することでガスの再循環を行い中間に設けた制御バルブの開度や開弁時間を変化させて開閉および流量調整を行う。また経路中に熱交換部位を設けることでガスの冷却が可能となる。一方で流入経路は常に排ガスに晒されるためカーボン等が堆積しやすく制御バルブなどの可動部の固着で動作不良が生じる場合がある。 高温のままでのEGR導入では吸気密度充填効率の低下を無視できないため、今日の外部EGRを採用するほとんどの機関は熱交換器によるEGR冷却機構を持つ(EGRクーラーを用いるクールドEGRやクールEGR。)。多くはエンジン冷却水を冷却材として用い、熱交換器で吸収した熱はラジエーターにより排熱するが、これによりラジエーターに必要な放熱量は最大で30 %程度増加する。これは冷却ファンの大型化その他による重量増を招く。 ガソリン機関では本格的なクールドEGRを採用することはあまり多くなかったが、日本車ではトヨタ・プリウス(ZVW30)の2ZR-FXE型、レクサス・RX(GYL1#)の2GR-FXE型、マツダ・デミオ(DE)のP3-VPS型など燃費を重視した車両から採用されはじめ、後には軽自動車を含め多くの機種に採用されるようになった。また、クールドEGRではない外部EGRにおいても本格的な熱交換部位はなくとも、EGR装置に簡易的な熱交換部位を設けたり、流入経路を工夫するなど、クールドEGRとはいえないまでも何らかの形でガス温度の低下を図っている場合が多い。クールドEGRはノッキング対策に有効であり、従来は点火時期を遅角(熱効率悪化)させることでノッキングを回避していた領域においても点火時期を維持することができ、省燃費性の向上には欠かせない技術となっている。 また、ターボチャージャー等の過給機を備えた機関で高負荷時にEGR導入を行おうとすると、吸気管内圧力が排気管内圧力よりも高くなり、単純なバルブの開閉だけでは導入できない事態が発生する。このため、EGR制御バルブに逆止弁機能を設ける、ターボチャージャーの可変ノズルを制御して背圧を高める、吸気行程中に排気バルブをわずかに開放し排気ポート内の他シリンダからの燃焼済ガスを再吸入する等の対策が採られている。更に近年では、低圧EGR(LPL-EGR、Low Pressure Loop-EGR)という対策が存在する。これは、従来のEGR(高圧EGR)は排気タービン手前から吸気コンプレッサ後に排気ガスを還す形であるが、低圧EGRでは排気タービン後から吸気コンプレッサ手前に還すものであり、過給圧の影響を受けずにEGRの導入を可能とするものである。EGRクーラーでの冷却によって生ずる凝縮水がコンプレッサを損傷させる等、主に信頼性の面での課題が存在したが、近年になって実用化された。ガソリン機関における低圧EGRの初採用例は、2014年7月にマイナーチェンジを行った日産・ジュークのMR16DDT型である。 EGR経路上に「改質器」を置き、排気ガスと燃料を触媒に反応させて水素を生成し、これを吸気側に戻して筒内燃焼を促進させる「燃料改質エンジン」の研究が進められている。2025年の実用化を目指す日産は、改質器内部の触媒にロジウムを主成分としたものを採用。2019年に試作した直列4気筒ガソリンエンジンでは3.6パーセントの燃費抑制効果が確認された。
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