土器成形の方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 08:36 UTC 版)
土器成形の方法はロクロの使用と不使用に大別される。 ロクロを使わない成形 土器出現期にはロクロは使われておらず、 手づくね - 粘土の塊の中央に指でくぼみをつくり、徐々に周囲の壁を薄くして器の形に仕上げる方法。 輪積み - 粘土紐、あるいはそれを平らにした粘土帯を環状に積み上げる方法。 巻上げ - 粘土紐、粘土帯を螺旋状(コイル状)に積み上げる方法。 型押し(型起こし、型作り) - 既成の土器の下半部や籠ないし専用の型をあらかじめ用意し、その内側に粘土を押し付けて器のかたちを作る方法 があり、ほかに、小さな粘土板をつなぎ合わせるパッチワーク法がある。縄文土器最古の一群にはパッチワーク法でつくられたものがある。 輪積み法と巻上げ法をあわせて「紐づくり」という場合があり、日本では縄文土器・弥生土器・土師器の多くが紐づくりでつくられた。紐づくり法では、木の葉、網代、布、板などを下敷きにしたり、回転台の上で作業したりして、成形中の土器の向きを変えることもある。紐づくりで土器が成形する場合は、木べらや指先で修正しながら行う。紐づくり法は、土器面に残された輪積みや巻上げの痕跡や粘土紐・帯の合わせ目に沿って割れた破片の断面などによって確認できる場合がある。 型押し法は、外側に型を用意し、内側に粘土をこめていく成形法で、とりわけ帝政ローマ期のアレッティウム式陶器はこの方法を多用されたことで知られている。 なお、中世日本でつくられた「かわらけ」は、瓦器と同様、食器や儀式・祭祀用の酒杯として用いられた土器であり、ロクロを使うもののほか手づくねによるものがある。かわらけは燈明皿としても用いられ、都市部や城館跡からの出土が多い。 ロクロ成形 回転台の発展したものがロクロである。ロクロ成形は、回転運動の遠心力を利用して、粘土塊から器の形を挽き出す成形方法である。作業は一般に水またはヌタ(素地を溶かした泥)で表面をうるおしながらなされる。ロクロによる土器製作が最も古いのは西アジアで、約5000年前にさかのぼる。中国では約4000年前の大汶口文化後期から竜山文化にかけて、南アジアでもほぼ同時期のインダス文明の時期に遡る。日本では、約1600年前の古墳時代の須恵器がロクロ使用の始まりである。 通常、ロクロ土器は成形と整形・調整が同時に進むが、成形後にケズリやタタキの調整が行われる例がある。ロクロの使用は、ロクロ台からの切り離し痕跡(糸を使う場合やヘラを使う場合がある)や土器面の指頭痕などによって確認できることがある。 なお、諸地域の民俗例を総覧すると、ロクロ挽きによる土器製造は男性、ロクロを使用しない土器づくりは女性によって担われることが多く、古墳時代の日本でも須恵器は男性、土師器は女性が作ったとみられている。ロクロを使うのが男性であるのは、女性よりも腕力が強いことが理由といわれている。今日ではロクロの多くは電動式となっているが、それ以前は手回しロクロを片手で回しながら成形し、のちには両手が成形に使えるよう「蹴りロクロ」が各地で考案されて足の力でロクロを回す方法が採用された。ロクロは大量生産と均斉のとれた形のものを作ることに長じているが、大形のものや横断面が円形でない容器を作るのには適していない。 なお、各種の成形法は単独で用いられることもあるが、民俗例からも確認されるように、紐づくりで大まかにつくってロクロで仕上げたり、下半分は型押しでつくり上半を巻上げで作ったりするなど、組み合わせて土器を製作することも少なくない。ロクロを使う場合でも、把手や脚部などは別個に成形され、あとでそれが接合されるという工程を踏むのが一般的である。
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