国際関係論の思想的背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/29 14:38 UTC 版)
「国際関係論」の記事における「国際関係論の思想的背景」の解説
国際関係論では、世界をまず国家間システム=国際システム (inter-national system) と考えることが多い。国際システムは国家を基本単位とする体系であり、外交や経済などの複合的な関係性により構成されている。国家とは主権を保有する統治機構により支配された一定の領域(領土・領海・領空)と住民の総体である。住民は国家の管轄下に置かれているために国民と呼ばれる。この国民国家が並存するシステムは1648年に三十年戦争の講和条約として締結されたウェストファリア条約に基づいているためウェストファリア・システムとも呼ばれる。 また、国際関係についてのいろいろな哲学的・思想的立場も発展してきた。 リアリズム (realism) は国際政治には国内政治と異なって全システムを統制する一元的な権力機構が存在しないため、本質は無政府状態(アナーキー)であるとする思想。リアリズムは性悪説に基づく政治哲学に依拠する思想であり、理念や倫理の影響を重視せず価値判断を交えずに現実を直視して国際関係を客観視することを重視している。リアリズムは新現実主義 (neorealism)、さらに新古典現実主義 (neoclassical Realism) として発展している。 リベラリズム (liberalism) は国際法と国際制度が国家の行動や国際秩序に与える影響を重視する思想であり、リアリズムに対抗しながら発展してきた。その哲学的な基盤は多様であり、ベンサムの功利主義やカントの世界平和論などが挙げられる。最も初期のリベラリズムは理想主義 (idealism) でありその後に相互依存論、レジーム論、連邦主義、機能主義、新機能主義、交流主義などの展開を経てネオリベラル制度論 (neoliberal institutionalism) として現在でも主要な立場として位置付けられている。 コンストラクティビズム (constructivism)は理念という概念を中心とし、知識 (knowledge) や規範 (norm) などの集団的に保有される理念をもとに行為主体のアイデンティティと国益を考える立場である。コンストラクティビズムは合理主義 (rationalism) と省察主義 (reflectivism) の中間に位置する立場ともいえる。 批判的国際関係論 (critical international relations)は伝統的な主流思想であるリアリズムやリベラリズムなどを批判しながら発展してきた考え方で、フランクフルト学派による批判的社会理論を基礎としたものと、アントニオ・グラムシの思想に影響を受けたものがある。また、ポスト構造主義やフェミニズム思想からのアプローチも含まれる。
※この「国際関係論の思想的背景」の解説は、「国際関係論」の解説の一部です。
「国際関係論の思想的背景」を含む「国際関係論」の記事については、「国際関係論」の概要を参照ください。
- 国際関係論の思想的背景のページへのリンク