国際私法上の国籍の扱い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 07:32 UTC 版)
国籍を連結点とする私法的法律問題が在日韓国・朝鮮人に生じた場合、当事者の国籍をどのように決定するかが問題となる。 日本の国賠法では相互補償主義を採るため、現在日本では北朝鮮との間に国交が存在しないとされることから、朝鮮籍人への賠償が不可能になるとの考えもある。そのため、裁判実務では朝鮮人には京都地裁昭和48年7月12日のように朝鮮半島に2つの国家が存在するとの事実状態から「北鮮と南鮮(韓国)を2国と見る限り、朝鮮人は二重国籍とみることができる」としたうえで、日韓の間に相互補償制度が存在すればよいとして、朝鮮籍への補償を認める態度を容認している。 また、日本の国際私法では、相続に関する法律関係は被相続人の本国法(国籍を有する国の法律)によるが(法の適用に関する通則法36条。つまり、例えばフランス人が死亡した際の相続人間の相続分などは、フランスの相続法により定まる)、被相続人が日本国籍を有しない在日韓国・朝鮮人の場合、被相続人が韓国籍を有していたとして韓国の相続法を適用するか、朝鮮国籍を有していたとして北朝鮮の相続法を適用するかが問題となる。 この点については細かな点でいろいろな見解に分かれるが、大きく分けると、通則法38条1項にいう「当事者が二以上の国籍を有する場合」に類似するものとして扱う考え方と、通則法38条3項にいう「当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合」に類似するものとして扱う考え方に分かれる。なお、少数説として、端的に日本が承認している政府の定める法律(韓国法)によるべきとする見解、特殊な事情から国籍を連結点として採用する基礎がないとして住所地法あるいは常居所地法(日本法)によるべきとする見解もないわけではない。 実際上の処理としては、上記の問題点に関する検討過程が裁判書に記載されていないことが多く、個々の判決や審判がどのような見解を採用したのか不明な場合が多い。もっとも、韓国籍として外国人登録されている場合は、そのように登録した具体的な事情を考慮せずに、韓国法を適用する場合が多く、朝鮮籍として登録されている場合でも、どちらの国籍に属するか検討するプロセスを経ず、北朝鮮法の解釈に不明な点があるとか、法の内容が明らかであってもそれが日本の社会で受け入れがたい場合もある(例えば、北朝鮮法では不動産は相続財産を構成しないとされている。もっとも、北朝鮮において1995年に成立した対外民事関係法では、不動産の相続については不動産所在地法が準拠法になるとされており、日本所在の不動産の相続に関しては狭義の反致が成立するので日本の相続法が適用されることになった)などの事情もあり、韓国法を適用する場合が多いとされている。
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