国立の美術館による取得
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「ディアナとカリスト (ティツィアーノ)」の記事における「国立の美術館による取得」の解説
サザーランド・コレクションは第7代サザーランド公爵フランシス・ロナルド・エジャートン(英語版)に相続された。その財産の大部分は絵画コレクションだが、2008年8月下旬に資産を多様化するためにコレクションの一部の売却を希望すると発表した。彼は2003年にも別のティツィアーノの絵画『海から上がるヴィーナス』をスコットランド国立美術館に売却していた。彼は最初、イギリス国内の国立美術館に対して、2008年末までにブリッジウォーター・コレクションのティツィアーノの対作品を1億ポンド(推定市場価格の約3分の1)以上の価格で購入を希望する美術館が彼らの中から現れた場合、両作品を提供する用意がある、ただし購入希望者が現れなかった場合は対作品あるいは他の絵画を2009年に競売にかけると呼びかけた。この呼びかけにスコットランド国立美術館とロンドン・ナショナル・ギャラリーが名乗りを上げ、『ディアナとアクタイオン』のために共同で5,000万ポンドを調達し、3年の分割払いで購入したのち、『ディアナとカリスト』についても2013年から同様の形で購入するつもりであると発表した。 この一連の出来事はエジャートンの言動と奨学金を受けている美術学生たちへの悪影響が懸念されたために、ロンドン芸術大学総長ナイジェル・キャリントン(Nigel Carrington)、元同大学会長ジョン・ツサ(John Tusa)から批判されたが、イギリスでは報道陣の支持を得た。2008年10月14日、アート・ファンド(英語版)から100万ポンドを受け取り、11月19日には国家文化遺産記念基金(英語版)の1,000万ポンドがこれに続いた。 しかしそれから進展が見られないまま、当初の期限であった12月31日が過ぎると、翌2009年1月にスコットランド政府が1,750万ポンドを寄付するのではないかと憶測が流れた。これに対してグラスゴーの国会議員イアン・デイビッドソン(英語版)が世界金融危機の大変な時期に、多額の出費をすることの必要性について疑問を呈したことで、政治的な騒動へと発展し、スコットランド政府の担当者は1,750万ポンドの寄付について否定する発言をしなければならなかった。最終的に、2009年2月2日に資金を調達して『ディアナとカリスト』の支払いを完了するために期限が延長されていたことが明らかにされ、これによって5,000万ポンドが調達され、無事に絵画が購入されるだろうと発表された 。ナショナル・ギャラリーの館長ニコラス・ペニー(英語版)は、『ディアナとアクタイオン』を購入するための訴えに貢献した多くの人が『ディアナとカリスト』も購入されるだろうと「理解して」いたが、2番目の5,000万ポンドの調達は「決して簡単ではありませんでした。私たちはそれができると信じており、たくさんの案を与えてくれました。それは無謀なギャンブルではありません」と述べた。 しかし、2011年10月23日、スコットランド政府は『ディアナとアクタイオン』の「キャンペーンに貢献した」と主張し、『ディアナとカリスト』購入の訴えには貢献しないと発表した。ナショナル・ギャラリーとスコットランド国立美術館が長い資金調達キャンペーンの後に絵画を4500万ポンドで購入したのは2012年3月であった。サザーランド公によって提示価格が500万ポンド引き下げられ、個人と信託の寄付により1500万ポンド、アート・ファンドから200万ポンド、文化遺産宝くじ基金(英語版)から300万ポンドが寄付された。残りの2,500万ポンドはナショナル・ギャラリーの積立金によるものである。 絵画は2012年3月1日からロンドンを皮切りに『ディアナとアクタイオン』と共にロンドンとエディンバラで交代で展示されているが、『ディアナとカリスト』の場合は、購入に対するナショナル・ギャラリーのより大きな金銭的貢献を反映し、60:40の割合でロンドンでより長期にわたって展示されている。
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