国債の日銀引受
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/14 23:58 UTC 版)
「インフレターゲット」の記事における「国債の日銀引受」の解説
「日本国債#国債発行と経済政策」も参照 インフレターゲット論の主張する重要な金融政策の一つは国債、市中債券、株式等の引受(公開市場操作の拡張)であり、とくに公正性の観点から日銀の国債引受が有効であるとの主張がなされた[誰?]。 国債の日銀直接引受は財政法第5条で原則禁止されている一方1年未満の短期的な政府短期証券の引受けは同条の適用外として解されており、日本銀行法第34条第4号で1年未満の政府短期証券の引受をできるとされている。 1年未満の政府短期証券の引受は1945年から1998年度までは継続的に実施されていた。これを長期国債まで適用を拡大させ、財政出動や大幅減税を実施する一方で、その財源としての国債を日銀に引き受けさせる事で実質的に通貨供給を増やすというものである(ヘリコプターマネー論)。 1990年代から2000年代の日本のケースでは直接これらの政策が採用されることなく、量的緩和政策、および2003年1月から2004年3月に行われた円安維持のための大幅な非不胎化介入により外国為替市場を経由してベースマネーが増加したため、2004年第3四半期までの内閣府発表のGDPデフレータはマイナスながら絶対値の少ない方向に変化したが、その後2005年第3四半期までは再度マイナスの値が増加する方向に転じたものの2007年第3四半期までは再度マイナスの絶対値が少なくなる方向となり、第14循環景気の拡大期間は2002年2月から2007年10月の69ヵ月となった。 岩田規久男は「インフレターゲットは財政ファイナンスを避けるための一つの仕組みだ。そもそもインフレターゲットというのがどうしてできたかというと、中央銀行がまだ独立していなかったときに、政府に無理やり国債を買わされていたためである。これでは中央銀行が財政ファイナンスをしていることになり、どんどんお金が出て行った結果、1980年代の欧米では二桁台のインフレになった。これでは困るので中央銀行は政府と目標は設定するが、達成するための手段は中央銀行が政府の介入を避けて自分で決定することにした。目標を達成するような当座預金の増額や、ベースマネーを増やすために長期国債を買うという判断は日銀自身がする。政府がそれ以上要求しても、目標を達成すればそれ以上は長期国債を買わないというのがインフレターゲットの役割である」「世界標準の物価目標の下では達成に向けた金融政策手段に関しては独立性が保障されているため、政府に国債購入を強要される財政ファイナンスの懸念は起こりようがない」「大量の国債買い入れを続けても終戦直後のような供給不足は生じないため、ハイパーインフレが起こる確率は少ない」と指摘している。 伊藤隆敏は「すでに日銀は相当規模の国債を買い入れており、満期構成は違うものの、金額上は国債の新規発行額とほぼ同額を買い入れている」と指摘し、財政ファインナンスの懸念を誘う規模との認識を示し「ほかに購入できるリスク資産があれば、国債だけ極端に買い入れ額を増やさないことが望ましい」と述べている。過去にインフレ目標達成の手段として日銀による長期国債の大量購入を主張していた伊藤は「国債を買って市中に出回るお金がリスク資産に向かえば大きな意味があるが、今(2012年)は財政が悪過ぎる」と否定的見解を示し「無条件でどんどん国債を買えば良いという主張に対し、私はくみすることができない」と指摘している。
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