固有状態熱化仮説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/27 17:12 UTC 版)
固有状態熱化仮説(こゆうじょうたいねつかかせつ、英: eigenstate thermalization hypothesis; ETH)とは、孤立量子系が平衡統計力学を用いてよい精度で記述できるのは何故かを説明するための、量子力学における一連の仮説である。 特に、初期状態では熱力学的平衡状態から離れている系が時間発展とともに平衡状態へ緩和(熱平衡化)するのかを理解するために、ETH が検討されている。
- ^ あるいは、系の平均のエネルギーのみが知られているような状況で、系のエントロピーを最大化するような微視的状態を見出す特別な確率分布を得たい場合に、カノニカルアンサンブルを利用することができる。いずれの場合も、系の振る舞いを少数の巨視的な物理量(エネルギー、粒子数、体積など)のみによって予測できることを仮定している。
- ^ なぜ量子カオスが古典カオスと異なる扱いをされなければならないか、直感的な説明として、文献によってはシュレーディンガー方程式の線形性と古典カオス系の運動方程式の非線形性を対比し、特に古典的な位相空間上の点が指数的に分離されていることとは対象的にヒルベルト空間上のベクトルの内積が保存することを強調していることがある。
しかし、これは誤解を招く説明である。なぜならば、シュレーディンガー方程式は純粋状態に対するフォン・ノイマン方程式と等価であり、フォン・ノイマン方程式の古典対応であるリウヴィル方程式もまた線形であるからだ。言い換えれば、量子力学と古典力学での違いは方程式の異なる表現を比較したことによる見かけのものである。したがって線形性は、量子系と古典カオス系で研究のための道具が異なっている本質的な理由にはなり得ない。
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