同和対策事業前後の差別
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 09:24 UTC 版)
かつて問題となった所得格差やインフラストラクチャー整備の遅れ、進学率の違いは住宅改善事業などの同和対策事業により指定地区ではかなり解消され、若い世代では差別意識は薄れてきている。しかし、身元調査が行われている事を背景に過去に被差別部落のリスト(特殊部落「地名総鑑」など)が会社の人事担当などを対象に売られる事件がたびたび起こっている[要出典]。結婚や就職、地域交流に関わる差別は当事者の判断にかかる事柄であり差別事象は多い。また、部落差別解放問題に取り組む団体の関係者(主に行政と地域との間のパイプ役となっている団体役員)による不正行為の発覚、路線の対立する各団体同士間のイデオロギーの差異に端を発する対立によるトラブルなど、違う類の問題も表面化している。 少なくとも高度経済成長による人口の大移動、それに伴う都市近郊の開発・移転によりかつての被差別部落地区が薄れたり、新しく転入してきた住民の間で忘れ去られていく傾向は多い。また各種運動の結果として差別意識が改善している部分も大きい。現在も義務教育の過程の中で、平等主義的な意味で、被差別部落についての教育が行われることがあるが、「寝た子を起こすな論」では「そもそも被差別部落の意味を理解していない(実体験として被差別部落が何であるかを知らない)子供に単に「部落」という言葉が差別語であるという意識を植え付けている」と主張されている。ただし、部落解放同盟委員長の組坂繁之は「差別は自然にはなくならない。それどころか、『寝た子を起こすな』というので自分の家が部落民であることも部落問題のことも何も教えられずに育った子供が、家の外で聞いてきた社会の偏見を鵜呑みにして家族の前で平気で差別発言をしたという例がある」と述べている。 一方、従来の「周囲の差別的な視線により移転の自由がままならず、同じ血筋の人が代々住み続けているところ」との一般的な部落に対するイメージとは異なり、京都市、大阪市などに多数存在する都市部落では、人口の流出入が極めて活発であり、社会的地位の上昇を果たした階層が転出していき、その代わり社会的に低位な層が転入してくるという循環構造が形成されていることが近年明らかになってきている。近い将来、それらの地区では、新たな貧困と、それに起因する様々な社会的問題を抱えることになるのではないかと懸念されている。早期に同和対策事業が開始された地域では、その一環として取り組まれた社会資本の老朽化が顕著になっているほか、すでに地区住民の実情に合わないものになっており、その対処を巡り新たな課題が発生していると指摘されることもある。
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