各国のガイドライン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/21 20:35 UTC 版)
『尋常性痤瘡治療ガイドライン2017』(日本皮膚科学会)では先に述べた通り抗菌薬は抗菌薬以外との併用が条件であるが、推奨度を示す。外用抗菌薬では炎症性皮疹に、外用抗菌薬(クリンダマイシン、ナジフロキサシン、オゼノキサシン)を強く推奨する。 内服抗菌薬(日本皮膚科学会2017)薬剤名適応分類胎児危険度分類推奨度USAUドキシサイクリン なし D D A (強く推奨) ミノサイクリン なし D D A* (推奨) ロキシスロマイシン あり B1 B (推奨) ファロペネム あり B (推奨) テトラサイクリン なし D D C1 (選択肢の一つ) エリスロマイシン なし B A C1 (選択肢の一つ) クラリスロマイシン なし C B3 C1 (選択肢の一つ) レボフロキサシン あり C C1 (選択肢の一つ) トスフロキサシン あり C1 (選択肢の一つ) シプロフロキサシン なし C B3 C1 (選択肢の一つ) ロメフロキサシン なし C1 (選択肢の一つ) セフロキシム アキセチル あり C1 (選択肢の一つ) ざ瘡(炎症性皮疹)への適応を有するロキシスロマイシンは、ファロペネムやミノサイクリンと比較して有意差がなかった日本のRCT報告があり、副作用は軽微であった。ミノサイクリンの有効性は確立されているものの、副作用の頻度が高く、重篤な副作用もあることから注意喚起されており、2012年のコクランレビューで推奨されているとしている(このコクランレビューの詳細は後述)。 2016年の米国皮膚科学会のガイドラインは以下。 局所療法薬剤勧告の強さエビデンスレベル過酸化ベンゾイル A I, II 外用抗生物質 A I, II 抗生物質&過酸化ベンゾイル A I 外用レチノイド A I, II レチノイド&過酸化ベンゾイル/抗生物質 A I, II アゼライン酸 A I 外用ダプソン A I, II サリチル酸 B II 代替医療 B II 硫黄、ニコチンアミド、レゾルシノール、スルファセタミドナトリウム(英語版)、塩化アルミニウム、亜鉛 の推奨をサポートできる限られたエビデンスがある。代替医療ではティートゥリーオイル、アーユルヴェーダの薬、薬草抽出物を挙げている。 全身抗生物質薬剤勧告の強さエビデンスレベルテトラサイクリン系(テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン) A I, II マクロライド系(アジスロマイシン、エリスロマイシン) A I トリメトプリム w/ または、スルファメトキサゾール w/o B II 使用期間の制限と局所療法の維持 A I, II エリスロマイシン、アジスロマイシン、アモキシシリン、セファレキシンの有効性もサポートしている。 以前のガイドラインでは、アクネ菌(英語版)を減少させるためにドキシサイクリンよりも優れたミノサイクリンを推奨していた。しかし、最近のコクランレ・ビューではミノサイクリンがざ瘡に有効であるものの、他の抗生物質より優れていないことが判明している。 ミノサイクリンは1mg/kg用量の徐放剤が最も安全であると示されているが、有効性については用量依存性が認められなかった。ドキシサイクリンは1.7 - 2.4mg/kg用量の範囲で効果的と示されている。 イソトレチノイン内服薬剤勧告の強さエビデンスレベル従来の投与 A I, II 中等度のざ瘡への低用量治療 A I, II モニタリング B II iPLEDGEと避妊 A II イソトレチノイン内服は、米国でざ瘡治療に30年以上使用されてきた。中等度のざ瘡に0.25mg/kgからの低用量治療が有効である。 2012年の欧州皮膚科学会のガイドラインは以下。 軽度から中等度の丘疹膿疱性ざ瘡 軽度から中等度の丘疹膿疱性ざ瘡へ、「過酸化ベンゾイル(固定)とアダパレン」の組み合わせ、もしくは「クリンダマイシン(固定)と過酸化ベンゾイル」の組み合わせが勧告強度「高」で推奨されている。 重度の丘疹膿疱性ざ瘡 重度の丘疹膿疱性ざ瘡の治療にイソトレチノイン内服の単独療法が勧告強度「高」で推奨されている。 中等度から重度の結節性ざ瘡 中等度から重度の結節性ざ瘡の治療にイソトレチノイン内服の単独療法が勧告強度「高」で推奨されている。 抗生物質内服について、ドキシサイクリン、リメサイクリン(英語版)、ミノサイクリン、テトラサイクリンは全て同等の効果と示唆されるが、ドキシサイクリンよりもミノサイクリンで有害事象報告が多く、重篤な有害事象報告はミノサイクリンに多い。しかしドキシサイクリンはミノサイクリンにはない光線過敏がある。リメサイクリンの有害事象報告は少なく、テトラサイクリンに匹敵する。ミノサイクリンやテトラサイクリンよりも、ドキシサイクリンやリメサイクリンを優先して選択する必要があるとされている。 イソトレチノイン内服によるうつ病リスクは関連が示されていない。実際には抑うつ状態を減少させている。自殺との関連も示されていない。しかし、うつ病リスクと自殺リスクは患者に知らされるべきである。
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