レゾルシノール
分子式: | C6H6O2 |
その他の名称: | レソルシン、レゾルシン、レゾルシノール、Resorcin、Resorcinol、1,3-Benzenediol、Pelagol RS、Resorcine、Pelagol Grey RS、デベロッパーF、C.I.オキシデーションベース31、C.I.デベロッパー4、ペラゴールグレーRS、C.I.Oxidation Base 31、C.I.76505、C.I.Developer 4、Developer F、ペラゴールRS、m-ジヒドロキシベンゼン、m-Dihydroxybenzene、m-Hydroxyphenol、1,3-Dihydroxybenzene、Benzene-1,3-diol |
体系名: | 1,3-ジヒドロキシベンゼン、ベンゼン-1,3-ジオール、レソルシノール、1,3-ベンゼンジオール、m-ヒドロキシフェノール |
レゾルシノール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/29 02:48 UTC 版)
レゾルシノール | |
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IUPAC名 | レゾルシノール(許容慣用名) 1,3-ベンゼンジオール 1,3-ジヒドロキシベンゼン(系統名) |
別名 | レソルシノール レゾルシン |
分子式 | C6H6O2 |
示性式 | C6H4(OH)2 |
分子量 | 110.11 |
CAS登録番号 | 108-46-3 |
形状 | 白色結晶 |
密度と相 | 1.28 g/cm3, 固体 |
融点 | 110 °C |
沸点 | 280 °C |
SMILES | Oc1cccc(c1)O |
出典 | 国際化学物質安全性カード |
レゾルシノール (resorcinol) とは、ベンゼン-1,3-ジオール(benzene-1,3-diol)の慣用名である。片仮名転記では、レソルシノールと書かれる場合も有るものの、本稿では。レソルシノールの表記に統一する。この化合物はベンゼンジオールの1種であり、ベンゼン環のメタ位に、2個のヒドロキシ基を有する構造をしており、水に溶け易い。カテコールやヒドロキノン(ハイドロキノン)の位置異性体にあたる。
合成
樹脂や、ベンゼン-1,3-ジスルホン酸を溶融アルカリで処理することで、レゾルシノールを得る。プロピレン、ベンゼンを原料とし、1,3-ジイソプロピルベンゼンから製造する。工業的にはクメンの自動酸化プロセスを応用した1,3-ジイソプロピルベンゼンの酸化により、過酸化物のジヒドロキシパーオキサイドを得て、酸触媒存在下で分解(クリベージ反応)によりレゾルシノールを得る。クメン法の副産物である1,3-ジイソプロピルベンゼンから製造可能なため、石油化学コンビナートによる生産に適する手法である[1][2]。
性質
レゾルシノールは、常温常圧で無色の固体として存在する。しかし、光に対して少々不安定であり、光の当たる場所に放置すると、空気中の酸素により徐々に酸化されて変質し、ピンク色を呈するため保管は注意を要す。
レゾルシノールはヒドロキシ基を2つ有し、水素結合の供与も受容も可能であるなど、比較的分子間力が強くなる構造を有する。この関係で、常圧で沸点は280 セルシウス度 (℃)[3]、融点は110 ℃前後である[4][注釈 1]。これに対して、ヒドロキシ基を2つともメタノールとのエーテルにした1,3-ジメトキシベンゼンは、常圧で沸点は217 ℃前後、融点は-52 ℃である[5]。1,3-ジメトキシベンゼンは、レゾルシノールよりも分子量こそ大きいが、水素結合の受容のみ可能であるため、分子間力がレゾルシノールよりも弱く、レゾルシノールの方が沸点も融点も高い。
ベンゼンは水溶性が低いのに対して、レゾルシノールの水溶性が高い理由も、水素結合の供与と受容のいずれも可能であるヒドロキシ基を2つ有する点が影響している。もちろん、水に限らず、レゾルシノールは極性溶媒に溶け易い性質を持つ。なお、レゾルシノールはヒドロキシ基は、いずれもベンゼン環に直結したフェノール性のヒドロキシ基であり、単なる炭化水素に直結したヒドロキシ基と比べて、酸としては強い。レゾルシノールの水溶液の酸解離定数は、25 ℃において、9.81である[4]。また、レゾルシノールを100 (g/L)の濃度で溶解させた水溶液は、20 ℃において、pHが4から6程度と、弱酸性を示す[4]。
用途
レゾルシノールの総需要の半分以上が、タイヤの強化材として用いられるタイヤコードの接着剤の原料である。次いで木材用接着剤原料、樹脂用難燃剤原料、樹脂用紫外線吸収剤原料となる。また、無水フタル酸と酸触媒反応してフルオレセイン(ガレイン)を生成し、蛍光染料の原料として重要である。
医療用途
主にピーリング剤として、5-15 パーセント (%) 濃度でニキビの治療に用い、ピーリング作用は10%以上の濃度で作用する[6]。文献では、20%濃度までが安全とされる[6]。しかし、妊婦が使用する際の安全性は、充分に確認されていない[6]。
その他
レゾルシノールは還元力を有しており、殺菌剤や防腐剤として利用される場合も有る。
製造者
主なメーカーは杭州 Amino-chem、住友化学、独ランクセス、印Atulなどである[7]。
これまで主なメーカーであった三井化学は2012年12月末を以って事業撤退した[8]。また、米国Indspecも2017年7月末をもって事業撤退した[9]。一方で住友化学は大分工場にプラントを新設し、 千葉と大分との2プラント体制にした[10]。
脚注
注釈
- ^ 常圧における融点の値は、資料により差異が見られるものの、いずれも、110 ℃前後の値である。
出典
- ^ “岩国大竹工場爆発火災事故に係る事故調査委員会報告書について”. 三井化学. 2023年3月30日閲覧。
- ^ 南部博彦 (1980). “自動酸化技術を利用したフェノール類の製造――クメン法の発展とその応用――”. 有機合成化学 38 (7). doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.38.713 2023年3月30日閲覧。.
- ^ Resorcinol(CID:5054)
- ^ a b c レソルシノール
- ^ 化学大辞典編集委員会 編集 『化学大辞典 (縮刷版) 4』 p.541(右下部) 共立出版 1963年10月15日発行 ISBN 4-320-04018-X
- ^ a b c J. Boer, G. B. E. Jemec (2010-1). “Resorcinol peels as a possible self-treatment of painful nodules in hidradenitis suppurativa”. Clinical and experimental dermatology 35 (1): 36–40. doi:10.1111/j.1365-2230.2009.03377.x. PMID 19549239.
- ^ “レゾルシノールの市場規模、2025年までに10億米ドル到達予測 用途別で最大シェアを占めるゴム製品の優位性は今後も続く見通し”. 株式会社グローバルインフォメーション (2021年1月6日). 2023年3月30日閲覧。
- ^ “岩国大竹工場でのハイドロキノンプラント稼動及びレゾルシン事業撤退について | ニュースリリース | 三井化学株式会社”. www.mitsuichem.com. 2019年6月4日閲覧。
- ^ “Resorcinol plant to close | Chemical & Engineering News”. cen.acs.org. 2019年6月4日閲覧。
- ^ "レゾルシン製造設備の増強について" (PDF) (Press release). 住友化学. 2008. 2023年3月30日閲覧。
固有名詞の分類
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