史料調査と史料批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 15:13 UTC 版)
歴史史料は文書、書物、日記などの古文書(文字史料)、考古資料、絵画史料などがあるが、これらは古くからある家の倉庫や、古書店などに眠っていたり、あるいは大学や公文書館、博物館などに寄贈、売却されていたりする。また、また、日本国内にはない史料も存在する。歴史学者はこれらの史料を探したり読んだりするため、調査に出かけることがある。史料を見つけたら、作られた年代や真贋を調べるために、紙質や字体などを調べて、偽書ではないかどうかを確認する。その後、史料の多くはくずし字などで書かれているため、翻刻(活字化)を行い、学会で研究報告がされたり、本や資料集として出版されたりする。史料は書店や図書館などで入手、閲覧することが可能になり、多くの場合歴史学者はこれを利用して研究を行う。しかし、史料に書かれていることがすべて事実というわけではない。そのため史料批判を行うことが必要である。 歴史学において史料批判は欠かせない作業である。史料批判とはその史料が信頼できるものなのか、信頼できるとしてどの程度信頼できるのかを見定める作業である。例えばある事件について、史料Aと史料Bが矛盾している場合、両方の史料の性格を考え、どちらが正しいか確定してゆく作業が含まれる。史料Aが事件から1年後の第三者による伝聞であり、史料Bは当事者の日記だとすれば、一般には事件に対して(時間的・空間的に)最も近い史料が確実なものと考えられるが、当事者の証言には(意識的・無意識的な)自己正当化が含まれることも多く、必ずしも真実とは限らないから、できるだけ多くの史料を集めて相互に批判検討を加えることが重要である。なお、伝聞であっても、その事件に対する世間での評価を含んでいるなど、史料として利用できる場合もある。 既に編纂されている史料の場合は、著述者の立場により意図的な編纂が加えられている場合もある。例えば中国の正史(二十四史)は唐代以降、国家による編纂となったために、当代の王朝を正当化するために先代の王朝の最後の皇帝などが実際以上に悪く書かれる傾向にある。こうした史料を残した人の思想や信条、政治的状況、当時の社会状況を慎重に見定めることが必要である。
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