古代起源説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/14 04:39 UTC 版)
古代の賎民身分である五色の賤に近世以降の被差別民の起源を求める説であるが、昭和20~30年代に入ってからは同和団体からも主張されるようになり、後述の異民族・異人種起源説も含めれば今日の主流の見解と言っても過言でない[要出典]。 松本治一郎の、「貴族あるところ賎族あり」「部落民へのいわれの無い差別を生んだ物は皇族へのいわれの無い敬意に他ならない」といった発言などから、天皇制の確立なかんずく大和朝廷による異民族制圧が賎民層の起源である、と言う考えもその一種とみることができる。部落の中には、松本の「神武と戦った」の他、「鬼の子孫」などの伝承が残る部落も少なくないが、鬼とは一般的には縄文人の子孫あるいは蝦夷といった異民族を指すというのが今日の見方である[要出典]。 なお,東京のアマチュア郷土史研究家菊池山哉は『穢多族に関する研究』(1912年・発禁本)における異種族起源説(次節以降参照)を放棄し、『日本の特殊部落』(東京史談会・1961年)において、全国約215カ所の「別所」を大和王権による俘囚の移配地と見て、別所を起源の一つとする説を提唱した。菊池説が歴史学界で評価されたことはないが、「別所」の俘囚移配地説について柴田弘武が『鉄と俘囚の古代史』(彩流社・1989年)などの研究を行っている。柴田はさらに約300カ所の別所を析出し、計約500カ所の別所を検討した結果、「菊池の説は動かし難いと思う」と述べている。少なくとも被差別部落の一部は別所を起源とするとの見方がある。 大阪大学教授の小浜基次(人類学者)が西日本の被差別部落を広島辺りまで調査したところ、西日本の一般民は朝鮮半島に多い短頭型であるのに対し、被差別部落民の頭型は東北や裏日本に多い中頭型であることが判明したという。 また、被差別部落の側から書かれた高橋貞樹『特殊部落一千年史』(更生閣・1924)は、「古代の被征服民にして賤業を課せられた奴隷が、時代の経過とともに一定特殊の社会群に変じ、さらに賤業を営むものが穢多族であるという観念に変わったものであろう」(岩波文庫・1992として再刊)としている。
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