古代氏族としての「氏」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/16 15:22 UTC 版)
日本の古代における氏(うじ、ウジ)とは、男系祖先を同じくする同族血縁集団、即ち氏族を指す。家々は氏を単位として結合し、土着の政治的集団となった。さらに、ヤマト王権(大和朝廷)が形成されると、朝廷を支え、朝廷に仕える父系血縁集団として、氏姓(うじかばね)制度により姓氏(せいし)へと統合再編され、支配階級の構成単位となった。 氏では、主導的立場にある家の家長が「氏の上」(うじのかみ)となって、主要構成員である「氏人」(うじびと)を統率し、被支配階層である「部民」(べのたみ)や「奴婢」(ぬひ)を隷属させた。氏は、部民や田荘(たどころ)、賤(せん)などの共有財産を管理し、「氏神」(うじがみ)に共同で奉祀した。氏の名は朝廷内での職掌や根拠地・居住地の地名に由来し、多くは氏姓制度により地位に応じて与えられたカバネ(姓)を有し、政治的地位はカバネによって秩序づけられた。 国名(国造)に由来する氏 - 出雲氏(出雲国造)、尾張氏(尾張国造)、紀氏(紀国造)、諏訪氏(洲羽国造)、吉備氏(吉備諸国造)、葛城氏(葛城国造)、毛野氏(上毛野国造・下毛野国造)など。 原始姓に由来する氏 - 和邇氏、穂積氏、蘇我氏、阿曇氏、久米氏など。 朝廷内の職掌(品部)に由来する氏 - 物部氏、大伴氏、丈部氏、額田部氏、膳氏、海部氏、磯部氏、阿曇犬養氏、鳥取氏、坂合部氏など。 宮号に由来する氏 - 長谷部氏、小長谷部氏、金刺氏、他田氏など。 皇族(名代)に由来する氏 - 建部氏、刑部氏、日下部氏など。 天皇に姓を賜わり新たに命名された氏 - 藤原氏、橘氏、源氏、平氏、豊臣氏など。 多氏、阿倍氏のように、地名起源か職掌名起源か議論がある氏もある。ウジの後には、(古代は)格助詞「の」を入れて読む。この「の」は、帰属を表す。例えば「蘇我馬子(そがのうまこ)」ならば、蘇我氏「の(に属する)」馬子、源頼朝(みなもとのよりとも)ならば、源氏「の」頼朝という意味となる。 また、氏の呼称は男系祖先を同じくする血縁集団に基づいて名乗るものであり、婚姻によって本来所属していた家族集団とは違う氏に属する家族集団に移ったとしても変えることはできなかった。ただし養子縁組の場合はケースバイケースであった。源師房が藤原頼通の養子になっても「藤原師房」とは名乗らなかったが、源義家の四男惟頼が高階氏に養子に行ったときは、高階氏に改称している。藤原清衡のように、もともと入り婿の形で清原姓を名乗っていたものが、藤原姓に戻したものもある。
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