受験生獲得競争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/21 07:57 UTC 版)
その過程で、受験生に対して様々な宣伝やサービスが行われるようになった。例としては、高校3年生を対象に就職率や就職先企業の実績、在学中に取得可能な公的資格などの広告や宣伝、オープンキャンパス(大学内の見学や学部などの説明、模擬授業、在籍学生や大学職員との交流イベント)、AO入試の実施などである。 大学によっては、オープンキャンパスで周辺主要都市からキャンパスへの無料送迎バスの運行や交通費の補助をしたり、学内食堂の無料券の配布、記念品の配布などが行われることもある。さらに、入試の成績優秀者に対して、入学金や授業料の全額または一部免除を行う大学も増えている。これには、併願受験を行う受験生を囲い込むという側面もある。 私立大学における経営収入の大部分を占める授業料を免除してまで学生を確保する動きがはじまったことは、大学全入時代の大学間競争が教育研究面での戦いだけでなく、財務状況、経営体力の争いであることを示している。よって、学生数を膨張させるマスプロ大学化が進んでいる。 一方、浪人生、ひいては受験生全体の数の減少を受け、予備校においても現役生を視野に入れた経営を行うようになっている。三大予備校の他、東進ハイスクールは現役生中心の授業を行い業績を伸ばしにかかる一方、地方の中小予備校は生徒集めに苦しい状況となっている。しかし「三大予備校」の一つと称される「代々木ゼミナール」が2014年8月に少子化とそれに伴う浪人生の減少、「現役志向」が高くなったとして全国にある校舎を渋谷など7校に集約すると発表した。この40年間で、聖文新社を含め受験産業に積極的に関与した出版社が次々と廃業に追い込まれた。 また、専門学校も大学より容易に入学できるという利点が大学全入時代の定員割れを起こしている大学の存在によってその利点が失われつつあり、存在目的である職業教育も大学が力を入れつつあるという苦しい状況となっている。上記の取得資格や就職率といった「学生獲得競争」により一部の大学が「就職予備校」「資格予備校」に成り下がったと評される。ある公立大学法人はその就職率の高さゆえ「就職予備校」と批判されたり、また、定員割れが続いていた地方の私立大学は「マナー研修」など「就職予備校」であることを前面に押し出し「高い就職率」をアピールし、志望者増加につながったという。 1990年代から大学生のダブルスクール現象が見られ、希望する職業を目指すため専門的な知識・技術を専門学校で学んだりするケースもある。ただし、専門学校は専門職大学への鞍替えが目立っていることもあり、ダブルスクールではなく再入学系というのもみられるようになっている。 2021年度は国公立大学の定員が127219人、私立大学への進学者が494213人であった。入学辞退者についてはデータがない。これらは短期大学入学者数45585人を含んでいる。
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