原油除去の方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 03:54 UTC 版)
「エクソンバルディーズ号原油流出事故」の記事における「原油除去の方法」の解説
まず微生物による原油の分解を試したがあまり効果がなく、次に耐火性のブームを使い辺地で試験的に原油を焼却してみたところ比較的良好な結果が得られた。しかし好天に恵まれずこの除去作業期間中に再度焼却が行われることはなかった。ブームとオイルスキマーを使った除去作業が程なく始まったが、事故後24時間はオイルスキマーを調達できず、厚い油層とケルプ(大型海草の一種)が装置を詰まらせがちであった。ある民間会社は3月24日に化学的分散剤をヘリコプターで散布した。しかし現場では波が小さく海中の原油と分散剤がよく混ざり合わず、分散剤は以後使用されなかった。 その後分散剤には原油そのものより悪影響があると見方が変わった。10万分の1の濃度の洗剤が海の哺乳類や植物の体内で濃縮されると急性の毒性を発揮するが、実際に散布域の潮間帯に張り付く大量のフジツボやカサガイなどが死滅した。 エクソン社は原油除去対応の鈍さを各方面から非難され、バルディーズ市長のJohn Devensは同社の危機対応のまずさに失望したと述べた。政府も沿岸警備隊の出動で対応したが、エクソン社の前には過去の流出事故以上に費用も計画も忍耐も必要な原油除去作業が山積していた。1万1000人以上のアラスカの住民がエクソン社の従業員とともに汚染地域全域で環境回復のための作業に携わった。流出した原油の問題はいまだにこの地域が抱える問題であり続けている。 原油が溜まったプリンス・ウィリアム湾は岩の多い入り江が多かったので、原油で汚れた岩を高圧の熱水で洗浄することに決まった。しかし岩に生息する微生物も吹き飛ばしてしまい生物の食物連鎖の一部が断たれたためこの一帯は不毛の地と化した。石油会社との利害関係がないアメリカ人専門家の間では今日、原油は徐々に分解するのを待ってそこに放置されるべきだったという考えが発生している。しかし当時は科学的助言も一般社会からの圧力も徹底的除去一色だった。 エクソン社はのちに『学生向けビデオテープ』というシールを貼った『科学者とアラスカの原油流出事故』というビデオテープを各学校に配布したが、その中の除去作業の報告は歪曲しているという。アラスカ州の資金援助によるいくつかの調査によれば、流出事故は長期と短期の経済的打撃をもたらすとしている。その中には、余暇やスポーツとしての釣りの棚上げ、観光客の減少、またエコノミストが『存在価値』とよぶ太古の自然を残すプリンス・ウィリアム湾の社会的価値の損失がある。動物相はいまだに災害からの回復過程にある。
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