原子炉の製作
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/19 14:45 UTC 版)
「デイヴィッド・ハーン」の記事における「原子炉の製作」の解説
ハーンは幼い頃に化学に魅せられてから、我流で化学の実験を行っていた。彼が自家製の原子炉という発想に至ったのは、『化学実験のゴールデンブック』(The Golden Book of Chemistry Experiments) を読んで影響を受けたからともいえる。ハーンは周期表に載っているあらゆる物質を集めることに夢中になったのだ。そしてそこには、もちろん放射性物質も含まれていたのであった。それからしばらくして彼は所属するボーイスカウトで原子力のメリット・バッジ(技能章)を与えられ、ついに自宅で原子炉をつくるというアイディアに夢中になった。ハーンは、こつこつと少しずつ家庭用品から放射性物質を集めた。例えば、火災報知器からアメリシウム、キャンプ用ランタンのガスマントルからトリウム、時計からラジウム、銃の照準器からトリチウム(中性子減速材)といった具合であった。彼の「原子炉」は穴のあいた鉛のブロックであり、1,000ドル分の電池から取り出したリチウムとブンゼンバーナーを用いて、トリウムの灰の純化を行った。 ハーンは教えを請うために、何人もの専門家に手紙を送った。文章には誤字や明らかな間違いが含まれてはいたが、彼は歳を誤魔化して科学者あるいは高校教師を装うことで信用を得ようとした。ハーンの最終目標は、増殖炉を作ることだった。彼はトリウムやウランの試料を核分裂性同位体に変換(transform)するために、低レベル放射性同位体を利用しようとしていた。 ハーンの原子炉は臨界質量にこそ達しなかったが、通常の環境放射線の1000倍をはるかに上回るほどの放射線を発する危険な装置であった。ハーンは不安に駆られて実験装置を破壊しようとしたが、偶然にも警察がその危険に気づくのが先だったため、彼の実験はFBIや原子力規制委員会を中心とする連邦放射線緊急事態対応計画の対象となった。1995年6月26日、環境保護庁はハーンの母親の土地を有害物質の浄化が必要なスーパーファンドに指定し、装置の置かれた納屋を取り壊すとともに、低レベルの放射性廃棄物をユタ州に埋めた。一方でハーンの母親は実験の全容が明らかになることで家屋を失ってしまうことを恐れ、放射性物質の大半を回収し、当局の把握しないところで一般ごみとして廃棄してしまった。ハーンもまた、放射線被ばくの医学的評価を受けることを拒絶した。
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