北大東島のリン鉱床
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「北大東島のリン鉱山」の記事における「北大東島のリン鉱床」の解説
北大東島は沖縄本島の東約360キロメートルにある、面積約11.94平方キロメートルの島である。島は後述のようにサンゴ礁の一種である環礁が隆起して形成された隆起環礁であり、隆起前は礁湖であった島の中央部が低く盆地状になっている。中央部の低地を囲むように「幕(ハグ)」と呼ばれる堤防状の高地があり、幕の外側も丘陵地帯となっている。中央部の低地は「幕下(ハグシタ)」、幕の外側に広がる環状の丘陵地帯については「幕上(ハグウエ)」と呼ばれている。そして島の周囲は海食崖で取り囲まれている。環状の丘陵地帯である幕上は幅約0.5キロメートルから1.8キロメートルほどあり、同様の地形を有する南大東島よりも広いという特徴がある。また幕上には中央低地を取り囲んでいる幕の他に、海側にも周囲よりも少し高い地域があって、幕と海側の高地との間は比較的平坦ないし谷状の地形となっている。 北大東島のリン鉱床は島内に広く分布している。鉱床はドロマイト化した石灰岩で形成されている大東層の上部の、粘土層、軽石質粘土層である港層と呼ばれる地層内にある。なお港層は長年のリン鉱石採掘の結果、現在ではほとんど確認することができない。鉱床の特徴としては一般的なリン鉱石であるリン酸三石灰の鉱床もあるが、リン酸、礬土、酸化鉄を主成分とするリン酸礬土鉱の鉱床の方が遥かに広い。 リン酸三石灰の鉱床は北西部の島内最高地点である黄金山のものが最も大きく、島の北西端の黒部岬付近とやはり北西部の玉置平にも鉱床があった。玉置平は黄金山の西麓にあり、島内を環状に巡る丘陵地帯である幕上の北西部に位置し、幕上と中央低地帯の幕下との間の高地帯である幕と、幕上の海側にある高地帯に挟まれた、標高約40メートルの南北に細長い平坦な地形である。玉置平のリン酸三石灰の鉱床は、主に後述のリン酸礬土鉱鉱床の下部に、基盤のドロマイト化された石灰岩を覆うように分布していた。リン酸リン酸三石灰鉱は塊状の鉱石、リン酸礬土鉱である粘土の中からは礫状、粒状の鉱石を産出した。塊状のものと礫状、粒状の鉱石は成分的にやや異なり、採掘後水洗を行うことによって礫状、粒状の鉱石は良品となった。 リン酸礬土鉱の鉱床は島内北西部の丘陵地帯全域に広がっていて、中央部の低地内の小丘にも鉱床が存在する。しかし一部を除きリン酸の含有量が少ないため、実際にリン鉱石として採掘されたのは北西部のうち約30万坪の鉱区であった。リン酸礬土鉱は硬質のものと軟質のものに二分されるが、赤褐色ないし黄白色をした塊状ないし粉状をした軟質の鉱石が大部分を占めていた。また軟質の鉱石には約3割の水分が含まれていた。北大東島のリン酸礬土鉱は通常のリン鉱石よりも水分が多い上に吸水性があった。乾燥を行っても空気中から湿気を吸収してしまうため、相当量の水分を含んだ状態で貯蔵、出荷を行なわざるを得ず、出荷時の重量が増大するため商業上の欠点とされた。 島内北西部の鉱区ではリン酸礬土鉱が地表に露出していた。中でも玉置平は優良なリン酸礬土鉱が多量に埋蔵されていて、元来サンゴ礁であったドロマイト化した石灰岩の凹凸を埋めるように産出した。リン酸礬土鉱が充填された凹みの大きさは2メートルから3メートル程度であり、深いものでは30メートル以上あって海水面に達した。また凹みの下部は不規則な形となり、隣と繋がるような場合もあった。リン酸礬土鉱床は露天掘りで採掘され、軟質であるため採掘にダイナマイト等の火薬類を用いる必要性は無く、人力で容易に採掘できた。またリン酸礬土鉱床は上部はリン酸の含有率が25パーセントから35パーセントであったが、中部は約35パーセントとなり、下部は約40パーセントと上部よりも下部の鉱石の品位が高かった。更に下部に行くにつれて酸化鉄の含有量が少なくなってリン酸アルミナとなった。 北大東島のリン酸三石灰鉱は肥料である過リン酸石灰の原料とされた。一方、リン酸礬土鉱は肥料であるリン酸アルミナの原料、主としてマッチに用いられたリンの製造用に販売され、更に後にはアルミニウムの原料としても用いられた。 北大東島のリン鉱石の埋蔵量については、品位の低い鉱石を含めると約1000万トンとの推定がある。1924年に農商務省の大井上技師の調査によれば、リン酸含有量20パーセント以上のリン鉱石埋蔵量は約165万トンと推定された。北大東島におけるリン鉱石の採掘総量は約77万4000トンであり、閉山後の1951年に大日本製糖が行った調査によれば、残存埋蔵量は少なくともリン酸三石灰は約27万トン、その他のリン鉱石約19万トン、計46万トンと推定されている。
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