共役π結合系発色団
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/04 06:12 UTC 版)
分子内の隣接する2つのp軌道がπ結合を形成するように、分子内の3つ以上の隣接するp軌道が共役π系を形成することができる。共役π系において、電子は無線アンテナがその長さに応じて光子を検出するのと同じように、p軌道の一定の距離に応じて共鳴することで所定の光子を捕捉することができる。通常、π系が多くと共役している(長い)ほど、捕捉される光子の波長は長くなる。言い換えると、分子図に見られる隣接する二重結合が加えられるたびに、黄色の光を吸収する可能性が低く、赤色の光を吸収する可能性が高くなるため、系は徐々に黄色に見える可能性が高くなると予測することができる(「共役二重結合が8個未満の共役系は、紫外線領域でのみ吸収し、人間の目には無色である」「青色または緑色の化合物は、通常、共役二重結合のみに依存しない」)。 共役発色団では、多くの場合芳香族系において一連の交互の単結合と二重結合により作られた拡張π軌道であるエネルギー準位間を電子がジャンプする。一般的な例としてはレチナール(光を検出するために目で使用される)、様々な着色料、布の染料(アゾ化合物)、pH指示薬、ピコペン、βカロテン、アントシアニンなどである。スペクトルのどの波長領域の光を吸収するかは、発色団の構造のさまざまな因子により決定される。分子内の不飽和結合(多重結合)の数が多い共役系を長くしたり伸ばしたりすると、吸収が長波長側にずれる傾向がある。ウッドワード則は、共役π結合系の有機化合物の紫外-可視最大吸収波長の近似値を求めるのに使うことができる。 これらのいくつかは配位子との配位錯体に金属を含む金属錯体発色団である。例えば、植物が光合成に使用するクロロフィルや脊椎動物の血液中の酸素を輸送するヘモグロビンである。これらの2つの例では、金属はテトラピロール大員環の中心で錯化される。金属はヘモグロビンではヘム団中の鉄(ポルフィリン環の鉄)であり、クロロフィルの場合はクロリン型環で錯化されたマグネシウムである。大員環の高度に共役したπ結合系は、可視光を吸収する。中心となる金属の性質は、金属-大員環錯体の吸収スペクトルや、励起状態の存続期間などの特性にも影響を与える。大員環ではなく共役π結合系を持つ有機化合物に含まれるテトラピロール部位も発色団として作用する。このような化合物の例は、黄色を呈するビリルビンやウロビリンがある。
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