作用機序、代謝最終産物、代謝率
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/04 00:02 UTC 版)
「フルデオキシグルコース (18F)」の記事における「作用機序、代謝最終産物、代謝率」の解説
グルコースのアナログである18F-FDGは、脳、褐色脂肪組織、腎臓、癌細胞等のグルコース消費の多い細胞に取り込まれ、そこでリン酸化される事で細胞外へ漏出しなくなる。通常のグルコースの2位の水酸基は解糖(グルコースを分解して代謝する事)に必須であるが、18F-FDGにはこの2-ヒドロキシル基が無い。従って、類似分子である2-デオキシ-D-グルコースと同様に、18F-FDGはそれ以上細胞内で代謝されない。その結果,18F-FDGの分布は、体内の細胞によるグルコースの取り込みとリン酸化の分布をよく反映している。 しかし、18F-FDGが放射性崩壊した後、その2位のフッ素は18O-に変換され、水環境中のヒドロニウムイオンからプロトン(H+)を受け取った後、分子は2位の水酸基に無害で非放射性の重酸素を標識したグルコース-6-リン酸となる。2位の官能基が新たに水酸基となった事で、通常のグルコースと同じように正常に代謝され、放射性物質を含まない最終生成物が生成される。 理論的にはすべての18F-FDGは上記のように代謝され、放射能半減期は109.77分であるが、臨床研究では体内に注射された18F-FDGの放射能の経路は大きく2通りに分かれることが示されている。フッ素18活性の約75%は組織内に残り、半減期109.77分で消失する。注射剤の全フッ素18活性の約20%に相当する18F-FDGのもう一つの経路は、18F-FDGの投与後2時間までに腎臓で排出され、半減期は約16分と早い(この部分は通常のPETスキャンでは腎集合系と膀胱を目立たせる)。この短い生物学的半減期は、全フッ素18トレーサー(英語版)活性のこの20%の部分が、同位体自体が減衰するよりも遥かに早く、薬物動態学的に(腎系を通じて)消失する事を示している。また、この速さは、この18Fの一部がもはやグルコースに結合していないことを示唆している。なぜなら、血液中の低濃度のグルコースは正常な腎臓に保持され、尿中には排出されないからである。このように18Fが尿中に急速に排泄されるため、PET検査を受けた患者の尿は、アイソトープ投与後数時間は放射性物質を含んでいる可能性がある。 18F-FDGを投与された患者や汗や排泄物からの放射能は、24時間以内(注射後半減期13回)に2-13 = 1⁄8192まで減衰する。実臨床では、18F-FDGを注射した患者は、少なくとも12時間(半減期7回、または最初の放射能量の1⁄128に減衰する迄)は、乳幼児、小児、妊婦等、特に放射線に敏感な人に近づかないように指示される。
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