伐採作業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/19 06:40 UTC 版)
木を切り倒す作業は、かつては斧または鋸を併用して行われてきたが、現代ではチェーンソーを用いることが一般的である。チェーンソーの取扱については、必要な資格を確認すると共に、適切な服装(防刃服、防刃長靴など)を選択する必要がある。また、必要に応じて鋸、くさび、くさびを打ち込むハンマー(ヨキ)、ロープ、ウインチ、バールなどを使用する。 まず、安全に伐倒させる方向を確認し受け口を切る。受け口は、直径の1⁄4から1⁄3程度を目安に水平方向から切り込みを入れ、さらに上方から水平の切り込み面に向け30度程度の角度をもって、斜めに切り込みを入れる。受け口によりできる三角形の木片は取り除く。切り残しの部分は、「つる」といい、後に倒す際のスピード・方向をコントロールする要素となる。 次に、つるの部分に反対方向から追い口を入れる。追い口は、受け口の高さの2⁄3程度の高さを目安に水平方向に切れ込みを入れる。追い口を入れることで、つるは立木の自重で挫屈し、受け口方向へ倒れるため加減を入れながら行うことが基本である。切れ込みを一気に受け口まで入れることは、立木の倒れる方向や早さを変化させることから危険である。直径の大きい木は、適宜、切れ目にくさびを入れてハンマーで打ち込むことで倒したり、ロープとウインチを併用して伐倒方向を制御する。こうした作業を全て高性能林業機械(ハーベスタ)で行うこともある。 間伐など立木が密生して行う場所では、伐倒した木が隣の木にかかり完全に倒れない「かかり木」が発生しやすい。かかり木は、放置すると不意に倒れることから危険であり、その場で対処することが必要である。対処方法は、その時々、状況にもよるが、つるの調整によって伐倒木を回転させたり、木回し棒(フェリングレバー)を用いて回して落とす。根本にバールなどを当てて、てこの原理で伐倒した木を安全な方向へ根気よく動かし、立木から離すことが原則である。危険ではあるが、かかり木に向かって新たな木を当てて、その両方を倒す技術もある(あびせ倒し)。安全に作業するためにワイヤーで引っ張りながら伐木することもある(チルホール伐倒)。 伐倒した木は、枝を落とし、流通を考慮した長さに切る(玉切り)作業の後、ウインチやケーブルクレーン、グラップルなどにより引き上げられ、トラックや林内作業車によって林外へ搬出される。大規模な傾斜の緩い伐採地であれば、ブルドーザーなど大型重機による引き出し、奥地でかつ高価な木材であればヘリコプターによる搬出がごく稀に行われる。 このような作業の過程は、事故が連鎖的に発生することが多く、熟練の作業者が丁寧に安全を確認しながら実施しても、これを完全に防ぐことは出来ない。林業労働者の労働災害発生率は、平均的な工場労働者の10倍から20倍以上になるなど非常に危険な仕事の一つとされている。
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