人間における例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 14:23 UTC 版)
「インセスト・タブー」の記事における「人間における例」の解説
「ウェスターマーク効果」も参照 常染色体潜性遺伝の疾患は、異なる系統との交配ではホモ結合せず、発現しない可能性が高いが、近親交配の場合は発現する頻度が高くなる。この理論は血縁者同士での妊娠確率の低下、できた子供の死産や乳児期死亡、先天的奇形、知的障害の確率が高くなるという事実により支持される。例えば、中世のヨーロッパの貴族は近親相姦を多く行ったが血友病に悩まされていた。一方で、その影響がどのくらいであるかに関しては評価が定まっていない。インカ帝国の伝承においては14代にわたり兄弟姉妹婚が繰り返されたにもかかわらず、健康上問題は起こらなかった等として遺伝的評価も疑問視する意見もあるが、ほぼ全ての有性生殖生物で同系交配の弊害が明白であり、人間だけがその例外であると考える根拠はない。 また血縁係数が高ければ高いほど遺伝的疾病のリスクも高まる。したがってはとこ婚のタブー視よりもいとこ婚のタブー視の方がより強く、いとこ間よりもおじ姪・おば甥間の方がタブー視が強く、それ以上に兄姉間、親子間の交配はタブー視されると予測できる。また父子間よりも母子間のほうが忌避されやすいと予測できる(父親は妻が産んだ子でも自分の子であると限らないため)。ソーンヒルによれば、おおむねこの予測は成り立っている。 家庭内での性交の忌避の、進化的な説明は次のように可能である。養子取りが一般的でなかった祖先の時代には、家庭内での性交は親族間による行為であり、それに嫌悪を感じ阻止することは自分自身が近親交配を避けるのと同じように適応的である。ただし、そのような心理的メカニズムが適応なのか、ほかの適応的な心的メカニズムの副産物かは安易に判断できず、十分検証されなければならない。
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