事故の分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 05:40 UTC 版)
ガス突出 石炭を含む炭層には、石炭が生成される時の副産物としてメタンガスが溜まっていることが多い。これを大量に含む個所を掘り抜いた時に発生する。メタンガスそのものは人体には無害であり、空気よりも軽いため通常は上昇するが、閉鎖空間の坑内で大量に噴出すると空気が追い出され、作業員は酸素欠乏症や、最悪の場合は窒息死することになる。一酸化炭素などの有毒ガスが同時に溜まっている場合、ガス中毒者を出すこともある。また、可燃性のメタンガスが一挙に噴出するため、直後にガス爆発などが発生することが多い。 ガス爆発 上記したようなメタンガスが大量に突出すると、静電気や火花など様々な原因によって爆発事故を誘発しやすくなる。特に閉鎖空間での作業となる坑内掘りでは、ガス突出事故の早期検知目的も兼ねてメタンガスの濃度を常時監視する必要がある。また、予めボーリングを行ってガスを抜く対策が重要であるが、十分に行われない場合は大量のガス突出を招き、大規模な爆発事故につながることとなる。21世紀初頭に至り、最新の設備を充実させてもガス爆発を防ぐ抜本的な解決法は確立されておらず、途上国の炭鉱ではたびたび事故が発生している。爆発による熱や衝撃、一酸化炭素などで多数の作業員が危険に晒され、また衝撃による落盤の発生によって生存者の早期救出が阻まれる場合も多い。 粉塵爆発 炭鉱内には石炭の粉塵が発生しやすい。これに掘削を行なう際に発生した火花などによって引火して爆発が起こることもある。またトロッコを走らせている最中にレールに付着した粉塵に車輪との摩擦熱で着火爆発した例もある。石炭の大部分が炭素であるためメタンガスによる爆発以上に一酸化炭素による死傷者が発生しやすい危険な事故である。通常は水撒きなどでリスクを最小限に抑えられる。 「粉塵爆発」も参照 坑内火災 炭鉱事故の中でも特に被害が大きくなりやすい事故である。ガスや炭塵の爆発に続いて発生することが多い。通常の火災と違い、周囲に可燃物である石炭が大量に存在するため、鎮火するまでに長時間かかることがほとんどである。例えば、北炭夕張炭鉱の神通坑では1924年に発生した火災が90年以上経った2016年現在においても鎮火していない。また、坑道が煙突となって熱や煙、一酸化炭素の通り道になるため、一度発生すると多くの犠牲者を出すことになる。坑道の入口を塞いで酸欠状態にすることで火を消し止める手法が一般的だが、最終手段として近くの川などから注水して坑道を水没させる手法も採られることがある。ただし、いずれの場合も作業員を事前に救出する手段を講じる必要があるが、1981年に発生した北炭夕張新炭鉱ガス突出事故では、坑内に安否不明の作業員が取り残された状態で注水作業を開始せざるを得なかったため、会社側は多くの批判を浴びた。 海水流入 海底に鉱区がある炭鉱で落盤が起きた時に発生する事故である。海底炭鉱では坑内火災をも超える最悪の事故で、噴出した大量の海水によって坑道が一瞬のうちに水没するため、坑内の作業員のほとんどが溺死する可能性が高い。また、排水や救出はおろか遺体の搬出すら不可能であり、そのまま坑道が放棄されることになる。
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