不利益取り扱いの禁止
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/29 14:41 UTC 版)
「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」の記事における「不利益取り扱いの禁止」の解説
事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならず、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない(第9条1項、2項)。また事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法上の産前産後休業を請求し、又は産前産後休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(第9条3項)。第9条3項は強行規定であるので、これに違反する行為は無効となる(広島中央保健生協事件、最判平成26年10月23日)。なお、「厚生労働省令で定めるもの」としては、以下の通り挙げられている(施行規則第2条の2)。 妊娠したこと。 出産したこと。 第12条若しくは第13条1項の規定による措置(後掲)を求め、又はこれらの規定による措置を受けたこと。 労働基準法第64条の2第1号(坑内業務の就業制限)若しくは第64条の3第1項(妊産婦の危険有害業務の就業制限)の規定により業務に就くことができず、若しくはこれらの規定により業務に従事しなかったこと又は同法第64条の2第1号若しくは女性労働基準規則第2条2項(産婦に係る危険有害業務の就業制限の範囲)の規定による申出をし、若しくはこれらの規定により業務に従事しなかったこと。 労働基準法第65条1項(産前休業)の規定による休業を請求し、若しくは同項の規定による休業をしたこと又は同条第2項(産後休業)の規定により就業できず、若しくは同項の規定による休業をしたこと。 労働基準法第65条3項(軽易な業務への転換請求)の規定による請求をし、又は同項の規定により他の軽易な業務に転換したこと。 労働基準法第66条1項(変形労働時間制の制限)の規定による請求をし、若しくは同項の規定により1週間について同法第32条1項の労働時間若しくは1日について同条2項の労働時間を超えて労働しなかったこと、同法第66条2項(時間外労働及び休日労働の制限)の規定による請求をし、若しくは同項の規定により時間外労働をせず若しくは休日に労働しなかったこと又は同法第66条3項(深夜業の制限)の規定による請求をし、若しくは同項の規定により深夜業をしなかったこと。 労働基準法第67条1項(育児時間の請求)の規定による請求をし、又は同条第2項の規定による育児時間を取得したこと。 妊娠又は出産に起因する症状により労務の提供ができないこと若しくはできなかったこと又は労働能率が低下したこと。 妊娠・出産等の事由を契機として不利益取扱いが行われた場合は、原則として妊娠・出産等を理由として不利益取扱いがなされたと解される(平成27年1月23日雇児発0123第1号)。「契機として」とは、「時間的に近接して(原則として、妊娠・出産・育休等の事由の終了から1年以内に不利益取扱いがなされた場合)当該不利益取扱いが行われたか否かをもって判断すること」とされる。事由の終了から1年を超えている場合であっても、実施時期が事前に決まっている、又はある程度定期的になされる措置(人事異動(不利益な配置変更等)、人事考課(不利益な評価や降格等)、雇い止め(契約更新がされない)など)については、事由の終了後の最初のタイミングまでの間に不利益取扱いがなされた場合は「契機として」いると判断される。平成29年1月1日より、これらの不利益取扱いがあったことにより離職した者は、雇用保険の基本手当の受給に際して「特定受給資格者」として扱われ、一般の受給資格者よりも所定給付日数が多くなる。 妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は無効となる(第9条4項)。すなわち、妊娠中及び出産後1年以内に行われた解雇を、裁判で争うまでもなく無効にするとともに、解雇が妊娠、出産等を理由とするものではないことについての証明責任を事業主に負わせる効果がある。このような解雇がなされた場合には、事業主が当該解雇が妊娠・出産等を理由とする解雇ではないことを証明しない限り無効となり、労働契約が存続することとなるものである(平成18年10月11日雇児発1011第2号)。
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