育児時間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 23:38 UTC 版)
第67条(育児時間) 生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。 第67条は、ILO3号条約(日本は未批准)に倣って工場法施行規則で定めた哺育時間を引き継いだ規定である。哺乳のための時間を休憩時間とは別に確保する立法趣旨であるので、男性が請求しても、育児時間を与える必要はない。なお「生児」については、必ずしもその女性が出産した子である必要はない。 第67条の実効を確保するため大規模の事業場にはできる限り託児所を設置するよう指導すること、とされている(昭和22年9月13日発基17号)。 育児時間は、労働時間の始め、途中、終わりのいずれの時間に与えてもよい。育児時間を有給とするか否かは、当事者の自由であり、無給でもよい(昭和33年6月25日基収4317号)。 1日の労働時間が4時間以内である場合には、1日1回の育児時間の付与で足りる(昭和36年1月9日基収8996号)。 「30分」には、託児所までの往復の時間も含むが、往復の所要時間を除いた実質的な育児時間が与えられることが望ましい(昭和25年7月22日基収2314号)。 第67条は使用者の許可や承認を定めていないので、育児時間の取得は、女性労働者の請求のみで成立する(形成権)。なお、女性労働者が請求しなければ、育児時間を与えなくてもよい。 第67条は上述の通り本来は授乳のための時間という趣旨であるが、それに限定されるものではない。第67条の制度が授乳よりも一般的な育児のために利用されれば女性のみを保障の対象とする根拠は薄弱となり、育児に従事する男女労働者の共通の権利として再構成される必要がある。なお2009年(平成21年)の育児介護休業法の改正により定められた「3歳未満の子を養育する労働者の所定労働時間の短縮措置」(育児介護休業法第23条)と第67条の育児時間の両方を請求することは可能である(平成28 年8月2日職発0802第1号)。
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