三島の蓮田観とは? わかりやすく解説

三島の蓮田観

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 07:45 UTC 版)

蓮田善明」の記事における「三島の蓮田観」の解説

蓮田善明16歳三島由紀夫出現を〈悠久日本の歴史の請し子〉〈われわれ自身年少者〉と祝福し、〈悉皆国文学の中から語りいでられ[霊のやうなひと〉と紹介するなど、三島は「親炙」した蓮田から、「やさしさのみを享け」、その印象は「薩摩訛りの、やさしい目をした、しかし激越慷慨家」であった。 そして蓮田説く鋭く犀利な〈皇国思想〉〈やまとごころ〉〈みやび〉に三島は強い共感持ち、「敗戦と共に自決によつてその思想貫き通した人物として三島中に刻まれ蓮田実践的死生観三島生涯に強い影響与えた蓮田2度目召集の際、まだ若かった三島に「日本のあとのこと」を託したとされ、蓮田から託された「大事なもの」は、歳を重ねるごとに三島中により強く復活してくることになった小高根二郎雑誌果樹園』に1959年昭和34年8月から1968年昭和43年11月まで断続連載されていた「蓮田善明とその死」を毎号進呈されていた三島は、その感想小高根に送っていたが、最終回読んだ後に、蓮田の「立派な最期」を羨ましい述べている。 毎月、これを拝読するたびに魂を振起されるやうな気がいたしました。この御作品のおかげで戦後二十数年隔てて蓮田氏と小生との結縁が確められ固められた気がいたしました御文章通じて蓮田氏の声が小生語りかけて来ました。蓮田氏と同年にいたり、なほべんべん生きてゐるのが恥ずかしくなりました。一体、小生忘恩は、数十年後に我身に罪を報いて来るやうであります。今では小生は、嘘もかくしもなく、蓮田氏の立派な最期を羨むほかに、なす術を知りません。しかし蓮田氏も現在の小生と同じ、苦いものを胸中蓄へ生きてゐたとは思ひたくありません。時代に憤つてゐても氏にはもう一つ信ずべき時代の像があつたのでした。そしてその信ずべき像のはうへのめり込んで行けたのでした。 — 三島由紀夫小高根二郎宛て書簡」(昭和43年11月8日付) そして小高根の『蓮田善明とその死』が刊行される際には序文として、蓮田の『青春の詩宗――大津皇子論』の一節、〈予はかかる時代の人は若くして死なねばならないではないか思ふ。……然うして死ぬことが今日自分文化だと知つてゐる〉を引きながら、「この蓮田氏の書いた数行は、今も私の心にこびりついて離れない。死ぬことが文化だ、といふ考への、或る時代青年の心を襲つた稲妻のやうな美しさから、今日なほ私がのがれることができないのは、多分、自分がそのやうにして〈文化〉を創る人間になり得なかつたといふ千年の憾(うら)みに拠る」として、蓮田の「怒り」の本質について以下のように考察している。 私はまづ氏が何に対してあんなに怒つてゐたかがわかつてきた。あれは日本知識人対す怒りだつた。最大の「内部の敵」に対す怒りだつた。戦時中も現在も日本近代知識人性格がほとんど不変なのは愕くべきことであり、その怯懦、その冷笑、その客観主義、その根なし草的な共通心情、その不誠実その事主義、その抵抗身ぶり、その独善、その非行動性、その多弁、その食言、……それらが戦時における偽善修飾されたとき、どのような腐敗放ちどのように文化本質毒したか、蓮田氏はつぶさに見て自分少年のやうな非妥協やさしさがとらへた文化のために、憤りかられてゐたのである。 — 三島由紀夫「序」(小高根二郎著『蓮田善明とその死』)

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