一過性脳虚血性発作(TIA)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 04:19 UTC 版)
「脳梗塞」の記事における「一過性脳虚血性発作(TIA)」の解説
詳細は「一過性脳虚血発作」を参照 TIAに関しては定義の混乱が認められる。1990年の厚生省の基準では「脳虚血による局所神経症状が出現するが24時間以内に(多くは1時間以内)完全に消失しかつ頭部CTにて責任病巣に一致する器質性病変が認められない」とされていたがその後のMRIの普及によって、上記の定義を満たしていても拡散強調画像で高信号域を認めることが非常に多く、脳梗塞の経過をとるものも認められた。そのため2002年The TIA working groupでは「TIAとは局所脳虚血あるいは網膜虚血が原因による短時間の神経症状による症状であり、通常は1時間以内に症状は消失し急性脳梗塞の所見を伴わないもの」とした。いずれにせよ、緊急MRIが行えるか否かで診断名は変わってしまうということである。ABCDDスコアを用いて脳梗塞の進展の予測が可能である。MRIにおける拡散低下病変やMRAにおける動脈硬化性変化を含めると精度が向上するという報告も存在する。 名称内容点数A(age) 60歳以上 1点 B(blood pressure) 収縮期血圧≧140mmHgまたは拡張期血圧≧90mmHg 1点 C(clinical features) 片側脱力 2点 脱力を伴わない言語障害 1点 D(duration of symptoms) 60分以上 2点 10分以上60分未満 1点 D(diabetes) 糖尿病あり 1点 TIA発症後2日以内の脳卒中のリスクは3点以下では1.0%、5点以下で4.1%、6点以上で8.1%とされている。糖尿病を除いたABCDスコアでは1週間以内の脳卒中のリスクが評価されており、4点では2〜4%、5点では12〜28%、6点では28〜36%とされている。TIAの概念が浸透するに従って一過性の神経症状全てがTIAと診断されがちになっている。以下にTIAに特徴的でない症状、TIAと考え難い症状をまとめる。NINDS-Ⅲでは局所性脳機能障害=TIA+脳卒中である。局所性脳機能障害とは脳の機能局在で説明できる神経脱落症状である。失神は脳の全般的な一過性虚血であり局所性脳機能障害である脳卒中ではない。脳卒中で意識障害を起こすことはあるだろうが、その場合は広範な脳梗塞になったら起こるものである。一過性の意識障害のみで局在性脳神経障害が伴わなければTIAは疑わない。 症状TIAに特徴的でない症状 椎骨脳底動脈系の他の症状を伴わない意識障害 強直発作、強直間代発作、間代発作 身体のいくつかの領域にわたって遷延性に進行する症状 閃輝性暗点 TIAとは考え難い症状 感覚障害の進行 回転性めまいのみ 動揺性(浮動性)めまいのみ 嚥下障害のみ 構音障害のみ 複視のみ 便あるいは尿失禁 意識レベルの変動に伴う視力障害 片頭痛に伴う局所症状 錯乱のみ 健忘のみ drop attackのみ しかし、非常に稀だが回転性めまいのみの脳梗塞なども知られており、除外は慎重に行う必要がある。 TSI(Transient symptoms associated infarction、脳梗塞関連一過性症候) MRI画像上は拡散低下が認められないのがTIAであるが、画像上拡散低下が認められるものの経過、持続時間がTIAとなるものをTSIと区別することがある。これは虚血性心疾患でいう不安定狭心症に相当すると考えられている。超急性期においてはDWIにて高信号を示すがADC-MAPにて低信号を示さないこともあり、これは多くの場合ペナンブラであると考えられている。この画像所見は脳梗塞のpseudo-normalizationと経過で区別する必要がある。
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