一時的な雇用情勢回復
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 15:02 UTC 版)
2003年ごろからようやく景気が回復基調に転じたころ、企業を長らく支えてきた団塊の世代の一斉退職が目前に迫っていた。本来であれば中堅社員や若手社員が団塊の世代の持つ経験や技術を受け継ぐ立場にあったが、長期にわたる採用抑制のために多くの企業で20〜30代半ばの社員が極端に少なく、人員の年代構成が歪んでいるため継承が円滑に行われる状況になかった。このため企業は急いで人員の確保に走り、2005年度(2006年春入社予定者)には新卒の求人総数はバブル景気期と同程度にまで回復し、2006年度〜2008年度(2007年春〜2009年春入社予定者)の新卒大学生の求人状況は、「バブル景気時以上」といわれるほどの水準に達した。企業全般では、中核となる人材を育てる投資の視点から新卒・第二新卒の獲得に走る一方で、上記の「就職氷河期世代」のフリーターを改めて正社員として雇い入れるには投資の面から非効率的であるとして消極的であった。2006年に発足した安倍晋三政権(第1次安倍内閣)は、こうした世代間の格差拡大の是正の一環として再チャレンジ制度を打ち出したが、制度が定着する前に退陣し、再チャレンジ制度は立ち消えになってしまった(のちに2012年に安倍が再登板(第2次安倍内閣)し、再チャレンジ担当大臣の職を復活させている)。 新卒採用の求人が増えた一方で、新卒の大半はそのほとんどが不景気の日本しか知らずに育っており、それゆえに大企業志望で、終身雇用を求める保守的かつ安定志向の傾向にあった。また求人数や就職率が改善したのも事実だが、企業は公表した求人数そのままの人数は採用しない(採用人数より質を重視する厳選採用)傾向にあったため、優秀な学生は内定を次々にもらうが、そうでない学生は内定を一つもらうのに苦労する「内定格差」が生じることになった。 こうした「売り手市場」は数年続いたが、世界金融危機が顕在化した2008年秋以降は、バブル崩壊時よりも急激な勢いで求人数が落ち込み、就職氷河期へと逆戻りすることとなった。
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