リードの根拠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 10:20 UTC 版)
NPBでは、捕手による投手リードにおいて、通常、以下の3つの要素が重視されている。 投げている投手に関すること:投手の力量の高低 投げられる変化球の種類や得手不得手 コントロールの良し悪し 投手の性格(常に冷静なタイプか、打たれるとカッとしやすい性格か、ピンチでも強気な投手か、弱気になりやすい投手か、おだてて気分を乗せた方がよい投手か、叱責して気を引き締めた方がよい投手か、ペースに乗ってテンポよく投げたい投手か、じっくり落ち着いて投げることを好む投手かなど) 投手のその日の調子 投手の疲労度 その局面での投手の心理状態 投手がある程度の割合でコントロールミスや失投をすることを想定した上で、たとえ打たれたとしても安打止まり、出来れば凡打にする配球など 相手の打者に関すること:相手の個々の打者の能力や特徴・傾向 打撃での癖 打者の性格 最近の打ち方の傾向(これらの諸データは主に自チームのスコアラーから提供される) 打者の心理 打者のその日の調子、など 試合の状況に関すること:点差やその時の走者の状況同点または僅差で競っており1点もやれない状況か、大量リードしており1点や2点は取られてもよい状況か 普通の試合か、完全試合やノーヒットノーランなどの記録成立が懸かっているか 内野ゴロを打たせるべき状況 ファウルを打たせたい状況 外野フライを打たれてはいけない状況 三振を取りたい状況など その打席での相手打者や相手ベンチの狙い相手が狙っている球種やコース 初球狙いかじっくり球を待ってくるか 打者が打とうと狙っている方向 バント・盗塁・ヒットエンドラン・スクイズプレイ等の可能性の有無など 守っている味方の野手陣の守備力、足、肩 (どこへ打たせたいか、どこへ打たれたくないか) 球場の条件球場の形状や特徴 屋外球場の場合は、天候・風向きと風の強さ デーゲームの場合は外野手の視線に入る太陽の位置など 自チームのサインやリードの癖を相手チームに読まれないこと。投手が次に投げる球がストレートか変化球かわかっていれば、プロの一軍レベルの打者は打てるからである。投手が良い投球をしているにもかかわらず連続して安打を打たれた場合には、捕手の配球(捕手が出すサイン)が相手チームに読まれている可能性を捕手が疑い、サインの出し方を捕手が変更することも少なくない。 捕手は、これらの諸要素を総合的に判断して打者への攻め方(投球)を組み立て、一球ごとの配球を考え、その配球を投手へ指示すると共に、味方の野手に守備位置やサインプレー等を指示する。 捕手はこれらの役割を負っているため、プロレベルの捕手は、 冷静さ:いかなる状況でも慌てたり短気にならない冷静さ・慎重さ 記憶力:スコアラーから提供されたデータや過去の対戦での配球とその結果などを記憶しておく記憶力 観察力:相手の打者・走者・ベンチの些細な動作などから相手チームの狙いやサインを見抜き、投手の表情や動作などから投手の調子や疲労度・心理状態などを察知する観察力 などが重要とされている。 捕手によるリードは、中学校野球部の捕手が共通して監督から指導されるようなセオリーがあり、プロにおいてもリードのセオリーと考えられているものがある。捕手は、そのセオリーに個々の状況に応じて上記の様々な要素を加味して投手の投げる球種やコースを決めて投手に指示する。プロにおいては、名捕手と呼ばれる捕手のリードは必ずしもセオリー通りではない場合もあり個々の捕手によって独自のノウハウや個性もあるため「リードに絶対はない」とも言われているが、梨田昌孝は、「リードに絶対はないが、絶対に限りなく近いものはある」とし、それを追及していくためには、捕手は上記の様々な要素を常に観察して見抜く観察眼が重要であると自著に記している。 このように、捕手は野球の守備において投手および守備陣をリードしチームの失点を防ぐ重要な役割を担っているが、捕手に必要な能力の第一はキャッチングの能力・技術とされ、日本のプロ野球チームにおいては、まず第一に投手のどんな投球でも捕球でき後逸しないことが捕手の必須の条件とされ、それに次いでリードの能力が重要であるとされている。
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