ヤム (ウガリット神話の神)
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/17 07:39 UTC 版)
ヤム (Yam, Yamm, Jamm[1]。音写では ym [2])は、ウガリット神話に登場する、海と川を神格化した神である[3]。神話において、主神バアルが最初に戦う敵とされている[2]。天上の父神イルウ(エル)と妻アーシラト(アシラ)との間の息子たち[2]の一人で、竜の姿であるとされる[4]。
注釈
- ^ 「王子ヤム」「裁き手ナハル」の訳は谷川政美による。谷川は他に直訳として「海の王子」「川の裁き手」も示している(『ウガリトの神話 バアルの物語』15頁)。他に、『バアールとアナト』(『古代オリエント集』281頁)には「汝らの主ヤム 汝らの君“審きの川”」、『オリエント神話』(201頁)には「海の王子、海流の支配者」、『神の文化史事典』(548頁)には「我らの主ヤム」「裁きの川(ナハル)」の訳がみられる。また『世界の神話百科 東洋編』(154頁)では「川を治める者」の名が紹介されている。
- ^ 谷川政美の説明では、エジプト第18王朝または第19王朝に属するものだという(『ウガリトの神話 バアルの物語』166頁)。
- ^ 『ヘブライの神話』『ウガリトの神話 バアルの物語』などで確認した名前。他に、「コシャルとハシス」(『古代オリエント集』で確認した名前)、「器用抜目なし」(『世界最古の物語』で確認した名前)、「熟練し、知覚の鋭敏な者」(『オリエント神話』で確認した名前)などがみられる。
- ^ 『世界最古の物語』277頁では、棍棒はもし外れても自分の手元に戻ってくるとされている。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』53頁、192頁で確認した表記。他に、「駆逐者」(『世界最古の物語』277頁)、「駆逐する者」(『古代オリエント集』282頁)、「追う者」(『オリエント神話』202頁)など。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』54頁、192頁で確認した表記。他に、「反撥者」(『世界最古の物語』277頁)、「追放する者」(『古代オリエント集』283頁、『オリエント神話』204頁)など。
- ^ 『ヘブライの神話』に収録された物語では、アシュタルトは豊穣の女神であるために、水を司るヤムに対するバアルの仕打ちを詰っている[17]。しかし谷川政美によれば、この場面でアシュタルトがバアルに言う言葉は、「撒き散らす」と「恥じ入る」のいずれにも翻訳できるという。谷川は、倒したヤムに対しバアルが恥じる必然性はないと考え、前者の訳を採った[18]。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』62頁、『古代オリエント集』286頁で確認した訳。他に、『オリエント神話』199頁では「タンニン」と表記されている。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』62頁で確認した訳。他に、『オリエント神話』199頁では「曲がりくねった蛇」、『古代オリエント集』286頁では「這いまわる蛇」と訳されている。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』62頁で確認した訳。他に、『オリエント神話』199頁では「七つの頭を持ち、とぐろを巻いたもの」、『古代オリエント集』286頁では「七つ頭の強い怪物」と訳されている。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』88頁で確認した訳。他に、『古代オリエント集』298頁では「悪い蛇 レヴィアタン」と訳されている。
- ^ 『オリエント神話』218頁で確認した訳。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』88頁で確認した訳。他に、『オリエント神話』218頁では「曲がりくねった蛇」、『古代オリエント集』298頁では「まがりくねる蛇」と訳されている。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』88頁で確認した訳。他に、『オリエント神話』218頁では「七頭のとぐろを巻くもの」、『古代オリエント集』298頁では「七つ頭のシャリート」と訳されている。
出典
- ^ 『世界の神話百科 東洋編』154頁で確認した綴り。
- ^ a b c 『ウガリトの神話 バアルの物語』28頁。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』29頁。
- ^ 『ヘブライの神話』153頁。
- ^ 『神の文化史事典』548頁で確認した綴り。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』16頁。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』32頁。
- ^ 『世界最古の物語』308頁。
- ^ a b 『ウガリトの神話 バアルの物語』166頁。
- ^ 『世界最古の物語』179頁。
- ^ 『ヘブライの神話』153-154頁。
- ^ 『世界最古の物語』273-276頁。
- ^ 『世界最古の物語』277頁。
- ^ 『世界最古の物語』278頁。
- ^ 『ヘブライの神話』155頁、『ウガリトの神話 バアルの物語』53-55頁。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』55頁。
- ^ 『ヘブライの神話』155頁。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』195頁。
- ^ 『世界最古の物語』278-281頁。
- ^ 『世界最古の物語』283-284頁。
- ^ 『オリエント神話』189-190頁。
- ^ 『オリエント神話』193頁。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』108-109頁。
- ^ 『オリエント神話』210頁。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』109-110頁。
- ^ 『ウガリトの神話 バアルの物語』14頁。
- ^ 『世界の神話百科 東洋編』154頁。
- ^ a b 『ウガリトの神話 バアルの物語』114頁。
- ^ 『ヘブライの神話』162頁。
- ^ 『神の文化史事典』578頁。
- ^ 『世界の神話百科 東洋編』166頁、『世界神話辞典』77頁。
- ^ 『世界最古の物語』304-305頁。
- 1 ヤム (ウガリット神話の神)とは
- 2 ヤム (ウガリット神話の神)の概要
- 3 レヴィアタンとの関係
- 4 参考文献
- 5 関連項目
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