モルガンを襲った敵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/02 19:57 UTC 版)
「ジョン・モルガン」の記事における「モルガンを襲った敵」の解説
モルガンは、二度、「銀行の敵」に襲われた。一度目はモルガンが金の買い付けで連邦財務省を援助している間、二度目はニューヨーク・ニューヘイブン・アンド・ハートフォード鉄道(NH)の財政悪化時である。 財務省を援助している間というのは、モルガンが金を買い戻し、アメリカの信用を回復したときである。1893年恐慌が長引く農村地帯では、金銀複本位制を歓迎していた。金本位制であれば、通貨の供給量には限度があるために不況は長引き、農民は苦しむことになるが、金銀複本位制であれば通貨の供給量を増大させることができ、インフレーションが起こり、農産物価格も上昇する。ところが、モルガンをはじめとしたシンジケートが金本位制を定着させたとして、モルガンらは憎まれ役となってしまった[要出典]。 NHの問題というのは、ニューイングランド南部の交通網にモルガニゼーションを実施したために起こった問題である。問題はさらにふたつあり、ひとつはNHがその後、多くの事故を起こしたこと、もうひとつは、トラストを目の敵とするルイス・ブランダイスの関心を引き、モルガンの死期を速めたとも言われるプジョー委員会(Pujo Committee、金融・通貨委員会内の小委員会)の介入を招いたことである(後節参照)。 NHは、設立時にモルガンの祖父が出資をしていたという経緯があり、モルガンが経営を握っていた。1903年には社長にチャールズ・サンガー・メレンを指名し、ニューイングランド州におけるモルガニゼーションに着手。鉄道、汽船、路面電車などの交通機関に敷衍し、ニューイングランドの交通機関の独占を図った。 その手法は、利益のまったく出ていない競合他社までをも巨額で買収するもので、その費用がかさみ、従業員は必要以上に増加した。さらに一部には近代化を施す費用もかかった。モルガン自身はその費用を調達するための社債等の発行手数料を100万ドルも得ていたほか、株主への配当は高配当であった。モルガンの後ろ盾があるため、超優良株でもあった。 しかし、経営状態は惨憺たる状態であった。前述の費用を賄うために、従業員の解雇や賃下げ、保線の間引きなどが行われた。そのために鉄道事故が立て続けに起こってしまった。メレンが社長を去り、モルガンが逝去した後までも、多数の死亡者が出る事故が続いた。 こうした状況を見たブランダイスは、企業と銀行の関係を公共の利益に反するものとして、目ざとく追求していくこととなった。
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