ミッションの実行とデータ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 11:46 UTC 版)
「ユークリッド (宇宙望遠鏡)」の記事における「ミッションの実行とデータ」の解説
ユークリッドは、仏領ギアナ・クールーのギアナ宇宙センターからソユーズST-B (または必要に応じてアリアン62)によって打ち上げられる予定である。 打ち上げ後30日をかけて、太陽と地球のラグランジュ点L2を回る振幅約100万キロメートルのリサジュー軌道に到達する。 ユークリッドのミッション期間は6年間と想定されている。この間、ユークリッドは天の川の反対方向を中心に全天のおよそ1/3に相当する約15,000平方度の宇宙を観測する予定である。さらに、この広域観測より感度の高い観測を、南北黄極近傍の3つの異なる天域40平方度に対して行う予定である(ユークリッド・ディープフィールド)。ユークリッド・ディープフィールドの観測に使用される時間は、全体の観測時間のおよそ10%である。この観測により、宇宙で最も遠い銀河とクエーサーを観測することを目指している。 銀河の赤方偏移を測光によって精度よく推定するためには、ユークリッド自身が持つ近赤外線域のフィルターに加え、少なくとも4つの可視光域フィルターで天体を測光する必要がある。このデータは、北半球と南半球の両方にある地上望遠鏡によって取得され、ユークリッドが観測する15,000平方度全体がカバーされる。これらを合わせると、ユークリッドが観測する各銀河は、460〜2000nmの波長帯で少なくとも7つの異なる波長帯域のフィルターで観測されることになる。 ユークリッドは、約100億個の天体を観測することになっている。そのうち10億個については弱い重力レンズ効果の測定が行われ、地上望遠鏡を使用した場合に比べて50倍の高い精度が得られる。また、銀河の集合の程度を研究するために、5000万個の天体の分光学的赤方偏移を測定する。 ユークリッドで得られる膨大なデータセットは、ヨーロッパを中心とする17か国(オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、ルーマニア、スペイン、スイス、英国、カナダ、米国、日本)から100以上の研究機関、1200名以上の研究者が参加するコンソーシアムによって解析される。このユークリッドコンソーシアムは、ユークリッドに搭載される観測装置の開発と、ユークリッドによって収集されたすべてのデータを処理するユークリッド地上セグメントの開発と実装にも責任を負っている。 ユークリッドの観測は広い天域をカバーし、観測の結果として数十億の星や銀河のカタログが生成されるため、データの科学的価値は宇宙論にとどまらず広く天文学分野全体に及ぶ。ユークリッドは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、 欧州超大型望遠鏡、 TMT、 アルマ望遠鏡、 SKA、 NSFヴェラ・C・ルービン天文台などの多くの天文台・宇宙望遠鏡ミッションのための豊富な観測対象を世界中の天文学コミュニティに提供する。
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