マルチディフューザー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 13:57 UTC 版)
「ディフューザー (自動車)」の記事における「マルチディフューザー」の解説
2009年に導入された技術規定において、ディフューザーの許容寸法は「後車軸中心線より後方に長さ350 mm×幅1000 mm×高さ175 mm」とみなされる(第3条5項1・第3条12項7)。しかし、第3条12項7の「下方から見える」という条件を外せば、175 mm以上の高さでも利用可能と解釈することもできる(第3条5項2)。 7チームのマシンは規定値通りのディフューザーを装着したが、ウィリアムズ・FW31、トヨタ・TF109、ブラウン・BGP001は、高さ175mmのディフューザーの上段(下方から見えない部分)に第2・第3のエアトンネルを設置。ステップドボトムの垂直段差面に通風孔を開け(第3条12項5)、そこから気流を引き抜いてディフューザーの効率を高める方式とした。これらの複層型は「マルチディフューザー(もしくはダブルディフューザー)」と呼ばれた。 開幕戦オーストラリアGPでは、ブラウンGPが1・2位、トヨタが3・4位と上位を独占したことで、規定違反ではないかとの論争が沸騰した。ブラウンGP代表のロス・ブラウンは、前年の時点で新規定の抜け道を指摘し修正を提案したが、オーバーテイク・ワーキンググループ (OWG) により拒否されたと主張。トヨタも新規定を詳細に検討し、開発段階からFIAに相談してきたと主張した。フェラーリ、ルノー、レッドブルの3チームはFIA国際控訴法廷 (ICA) に提訴したが、4月14日に合法との裁定が下されたため、抗議派のチームも追随せざるを得なくなった。 以後、ダウンフォース回復の秘策として熾烈な開発競争が繰り広げられたが、ドライバーやチーム関係者からは新規定を導入した意義が損なわれるという意見も出された。 2010年には上段トンネルの経路を確保するためギアボックスを底上げしたり、エンジンを前傾して搭載する設計まで見られたが、2011年の規定改正により、マルチディフューザーはFダクトとともに使用が禁止された。 (原文)3.5 Width behind the rear wheel centre line3.5.1 The width of bodywork behind the rear wheel centre line and less than 200mm above the reference plane must not exceed 1000mm. 3.5.2 The width of bodywork behind the rear wheel centre line and more than 200mm above the reference plane must not exceed 750mm. 3.12 Bodywork facing the ground3.12.5 Fully enclosed holes are permitted in the surfaces lying on the reference and step planes provided no part of the car is visible through them when viewed from directly below. 3.12.7 No bodywork which is visible from beneath the car and which lies between the rear wheel centre line and a point 350mm rearward of it may be more than 175mm above the reference plane. (和訳) 3.5 リアホイール中心線より後方の幅 3.5.1 リアホイール中心線から後方にあり、基準面から200 mm高さ未満の車体の幅は1000 mmを超えてはならない。 3.5.2 リアホイール中心線から後方にあり、基準面から200 mm高さ以上の車体の幅は750 mmを超えてはならない。 3.12 地面に面した車体3.12.5 基準面と段差面を構成する表面に完全に閉鎖された穴を設けることが認められるが、真下から見てそれらの穴を通して車両のいかなる部分も見えないことを条件とする。 3.12.7 車両の下方から見える車体で、リアホイール中心線とそれより350 mm後方に位置するいっさいの部品は基準面より175 mmを超えて上方にあってはならない。 -- 2009 FORMULA ONE TECHNICAL REGULATIONS(2009年度 F1テクニカルレギュレーション)
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