マリアの懐胎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 00:57 UTC 版)
マリアの処女懐胎が記述されているのは、新約聖書の福音書中では、マタイによる福音書とルカによる福音書である。どちらも聖霊により身ごもったことが記述されている(マタイ伝 1章20節、ルカ伝 1章35節)。処女懐胎の記事は、両福音書が参考にしたマルコ福音書、また、マルコかルカの福音書を知っていたかもしれないヨハネが記した福音書には、言及はない。 マタイ福音書では、大天使のガブリエルの告げる言葉が、七十人訳聖書(ギリシア語訳の旧約聖書)のイザヤ書からそのまま引用されている。 見よ、乙女が身ごもって男の子を産む。その名はインマヌエルと呼ばれる — マタイ伝 1章23節、イザヤ書 7章14節 イザヤ書の当箇所について、この『乙女 ('almah, עַלְמָה) 』は、本来は『若い娘』と訳すべきであり、『処女 ('betulah, בְּתוּלָה) 』という意味はないと学者の間で意見が一致している 。「マリアの処女懐胎はこの誤訳の産物だ」といった説があるが、真相は定かではない。 この預言はイザヤを通してアハズ王に与えられたものであり、イエス・キリストとは関係がない。一般的にはアハズの息子で善政を敷いたヒゼキヤ王の誕生を預言したものとされる。 イエスのダヴィデの子孫という系図はユダヤ人たちのために意図されたものである一方、処女懐胎の物語は異教神話の処女懐胎や神々により妊娠した女性たちの物語に親しんだギリシア・ローマ人の聴衆のために意図されたものと考えられる。 処女懐胎の物語は、イエス・キリストがその誕生から神の子(神性)であったということを明示する意図を持っている。しかし、マリアに関しては全く神聖視していない。マリアを普通の女とみなすのは、マルコやヨハネも同じである。後に、キリスト教が他の地中海世界に広がるに際して、処女信仰や太母神信仰と複雑に絡み合い、カトリックや東方教会ではマリアは聖母として崇敬の対象となり、処女懐胎は最も重要な教理の一つにまでなった(処女降誕参照)。 西欧語では、処女を意味する語が、(大文字にすると)そのまま聖母マリアを指すことが多い。西: La Virgen、仏: la Vierge、英: the Virginなど。
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