有性生殖
マラーのラチェット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 02:28 UTC 版)
「無性生殖では有害遺伝子が徐々に蓄積していき、いつかは生殖や繁殖に支障をきたすに至る」という理論。ハーマン・J・マラーとロナルド・フィッシャーにより提唱された。 有害遺伝子を0〜x個持つ個体が入り混じった生物集団を仮定する。無性生殖を行う個体群では、有害遺伝子が生じても、遺伝子の組み換えが起こらない無性生殖では取り除かれない。ここで有害遺伝子0個の個体が偶然に絶滅した場合、最小の有害遺伝子数は1個となる。さらに有害遺伝子を1個持つ個体が偶然に絶滅すれば、最小の有害遺伝子数は2個となる。このように、徐々に有害遺伝子数の最小値が大きくなっていくと、ある集団における有害遺伝子の比率が徐々に大きくなる。 有害遺伝子が蓄積されていくと、一つの効果は小さくても、遺伝子の組み合わせによっては、生存や繁殖に支障をきたす可能性がある。当然、集団内における有害遺伝子の割合が高まれば、そういった組み合わせが出来上がる可能性も高まる。 しかしこの説に関しては、有害遺伝子を持つ個体の方が淘汰を受けやすい為に、そもそも有害遺伝子は集団から排除される傾向にあり、従って有性生殖の必要性を説くには不十分である、などの反論もある。 ラチェットとはテニスのネットを巻き上げる際にも使われる機構のことだが、有害遺伝子蓄積の一方通行性を示す表現としてマラーの「ラチェット」と呼ばれる。有性生殖は、ラチェットでいえば巻き上げ過ぎた時に緩めるための機構にあたり、遺伝子組み換えにより有害遺伝子の不可逆的な蓄積を防ぐ。これが、この考えを根拠にした有性生殖の意義である。 Muller's Ratchet
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